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しばらくは部屋に閉じこもっていた。俺が外に出ると雨が降り、皆が迷惑する。俺は外に出ちゃいけない人間なんだ。自分に言い聞かせた。俺が部屋の中にいる限り外は晴れていた。逆に晴れすぎていた。梅雨の時期に雨がまったく降らず、水不足が騒がれた。
農家の人が水不足で困っているというニュースを聞いて、俺は久しぶりに外に出た。久しぶりの日差し、と思ったのもつかの間、頭上を暗い雲が覆い、忽ち雨が降り出した。
俺は雨に降られ、というか降らせながら街中を闊歩した。救いの雨だと農家の人は喜んだ。初めて人の役に立てた気がして嬉しかったよ。でも調子に乗って散歩しすぎたせいで今度は雨を降らせ過ぎちゃって作物をダメにしちゃった。農家の人の哀しげな顔をニュースで見て、外を歩くときは計画的にと誓ったのさ。
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