やまない雨

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 俺は週に2回だけ外を出歩くことにした。火曜日と金曜日。家から徒歩十分の距離に図書館があった。自習用の机なんかもある結構大きな図書館さ。学校には行かないけど、俺は知識に飢えていた。昔から屋内で過ごすことが多かったから古今東西の本を読むのも好きだった。図書館は俺にとって世界と繋がれる唯一の場所だったんだ。  学校が終わる時間だと知っている顔に出くわす可能性があるから、行くのは決まって午前中の早い時間だった。俺は自習机のいつも同じ席に座って本を読んだ。本を読めばいつだって行きたい場所、見たこともないような場所にトリップすることができた。  いつの頃からだろう、視界の端に女の子の姿が映るようになったのは。彼女もいつも同じ席に座っていた。俺と同じような年頃の女の子だった。彼女も学校をサボっているのか。そう思うと親近感が芽生えた。それに彼女は肌が白くて人形みたいに整った顔をしていた。物語の登場人物みたいだった。  いつのまにか視界の端に映る彼女のことを意識するようになって、読んでいる本に集中できなくなっていたある日、気付いた。恋に落ちていることに。
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