真夏の夜の悪夢

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真夏の夜の悪夢

 ――7月の終わり。  高校が夏休みに入ったばかりの、蒸し暑い夜だった。  風呂を上がり、リビングでソーダ味のアイスキャンディをかじる妹。  その横を姉が通り抜け、玄関の方へと向かう。 「姉さん?」  風呂が空いたと声をかけたばかりなのに、入らずに外出しようとしているようだ。  テレビに映る時刻は22時ジャスト。  高校生が出歩く時間ではない。 「姉さん、今から出掛けるの?」  不審に思って玄関まで追いかけてきた妹に、姉は笑顔を作った。 「大丈夫。すぐ戻るから」  笑顔でそう言った姉に、妹は黙ったままだ。  返事がないのを少し寂しそうにしながら、姉がドアを開けて出ていく。  無言のまま、その背中を見送った。 「嘘つき」  見えなくなった姉に向かって呟く。  妹には、すぐ戻るというのは嘘だとわかっていた。直感していた。  そう――姉の言った『すく戻る』と言う言葉に、(かげ)りがあったから。  そして、その日――姉は帰ってこなかった。
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