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高宮京…悟……
しかし、栗頭は全く気付くとなく、俺が言ったことに心底同感している。
そんな場合じゃないだろ!後ろ見ろ!後ろ!!
叫ぶには俺のこころはチキンすぎた。
そもそも俺からふってしまった話だからなおさら、その言葉がのどの奥にへばりついて言葉に出ようとしてこない。
栗頭はそんなこと知るよしもなく、その口を開く。
「だよなぁ。アイツ入学当初からモテモテで告白されやがって……まじでこのまま行くと全部女の子取られちゃうよなぁ……。まぁそれはさておき、先輩が理解あるひとで良かった~。正直、言ったはいいけど否定されたらどうしようかと思ってたんですよぉ」
へぇ~……じゃぁ言うなよ!お前のせいで無駄に腹筋痛いし!
しかも、やっぱり後ろからの影が怖すぎる。
怖すぎてもはや俺は天井に目線を向けるが、一向に天井の情報が網膜を通って伝わってこようとしていない。
「あっ! そうだ先輩! なら一緒に高宮京悟を倒しましょうよ! 先輩と一緒なら俺、高宮京悟の人気なんて簡単に落ちますよ!」
「ゲホッ…ゴホッ……ゴホゴホッ」
おっお前……なんてことを…後ろに……
波が激しくぶつかり合う断崖絶壁で、さんざん危ないから押すなよって言われたのにいきなり後ろから押された気分だ。
まさに絶望なう。
うわーさいあく
その瞬間の、高宮京悟の顔が忘れられない。
人ってあんな一瞬で青筋が立てられるのだろうかと感動してしまった。
同時に噴出される黒いオーラが俺の視界を焼きつくし、気が付くと、大量の汗で湿ってしまっている栗頭の背中が見えた。
なんて男らしいんだ……と今だけは栗頭に同情しよう。
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