39人が本棚に入れています
本棚に追加
―――――――
――――
「どうしたんですか? 二人だけで残って……先輩はイタイケな高校男児を食べちゃうような人だったんですか?」
硬い言葉が教室を冷ややかに包み込む。
急速に回り続ける思考で熱くなった頭を冷やすには十分で、微熱のような感覚におかされる。
拍車をかけるように、ゲイ発言をかわされたダメージは半端なく俺の精神力を削っていった。
しかも、栗頭は気付いたと思った瞬間に全力疾走で逃げやがった。
あのは走りはきっとギネスだって夢じゃない。
激しく暴れまわる怒りをキツク握る手共に抑え込む。
高宮の方をチラリと恐る恐る覗くと、バチリと依然として顔に青筋を立て、こっちをガン見しているものと目があった。
「アハハハ……は」
苦笑いをこぼしながらゆっくりと視線を外そうとするが、途中で、悠斗が気付く。
あれ?高宮ってこんな顔だったんだ……
今、初めて悠斗は真正面から高宮京悟の顔を見た。
いつも遠くから見るからか、それ以前に高宮と関わりを持ちたくなかったため、こんなに間近に、それも真正面から見るのは初めてだった。
カッコイイ……
素直に思った。
切れ長の目の奥に隠された深い、吸い込まれるような瞳。
すっきりとした輪郭も、挑発的に笑みを張り付けた笑顔も、
ふさっと顔にあたるくすぐったい猫のような髪質に、形の整った鼻も、
それ全部が女の子を夢中にしてやまないものなのか。
ただ……俺自身も、不思議なほどに見とれていた。
ようやく俺が我を返したのは、高宮が俺に向かって自嘲を含んだ笑みを上げた時だった。
張り付けたようなその顔一瞬寒気が俺を襲い、体を震わす。
馬鹿にしているのか、それとも見損なっているのか、どちらにせよ軽蔑されているような眼差しに違いない。
そんな目で見られるようなことは……まぁ……でも事実してないんだし……。
最初のコメントを投稿しよう!