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悠斗は怒りを抑え、荒い息づかいで切り出す。
「確かに、俺は学園に通っていた。しかも、ゲイだ。でも、それでもさっき言った通り、俺だって誰でもいいわけじゃない! 馬鹿にするな!」
冷静になるという言葉は今の悠斗の辞書にはない。
これまでビクビクしておびえていた言葉を唾が飛ぶほど叫んだ。
そして、真っ直ぐ、怒りを込めた視線を目の前の顔にぶつけた。
――馬鹿にしやがって。俺の事情なんて知らないくせに……
何も知らないくせに相手に見下されることがどんなにつらいのか分かっていない。
ゲイだからと否定されるのがどんなに嫌なのかわかっていない。
人の気持ちが分かっていないことがどれだけ腹が立つのかも、こいつは分かっていない。
薄らと、目じりに涙が浮き上がったのは、きっと怒りのせいだ。
こんな奴のせいで悲しくなったりなんてしない。
――絶対に……
しかし、歪んだ視界の端から入ってきたのは、ひどくあせったような高宮の顔だった。
表裏をひっくり返したように打って変ったその顔に、ガツンと一発殴られた感覚が俺の頭を直撃する。
涙がさらにあふれてきた。
「なんで……お前…そんな…カオ……
わけが分からない。
っと
責め立てるように言ってやりたかったのに、俺の口から出たのはみっともなく縺れた言葉。
目頭からは止まることなくあふれてくる涙。
顔面崩壊もいいところだろう。
手で覆い隠そうとも上の方で括られていてはどうしようもなかった。
恥ずかしさ。
怒り。
疑問。
こみあげてくる入り混じった感情にまた涙があふれそうになり、悠斗はギュッと目をつぶって高宮の視線から逃れようとした。
でも、
「ンンッ!? ……」
とたんに、柔らかないものが悠斗の唇を覆った。
覆われたところから疼く甘い感覚に気の抜けた声が悠斗の鼻から抜け出てしまう。
「んな……んァ……」
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