二【春・出会ってしまった】

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 ひょこっと目の前に栗色の毛の明るい少年が飛び出してきて、大声でそう叫ぶ。  いきなりでびっくりした悠斗は上ずった声を抑えることができない。 「うわ!? なっ…なに……ていうかなんで俺のことしってんの」 「うわって……先輩やっぱり噂以上に可愛いっす! なんでって先輩自覚ないんですかぁ?」 「はぁ? なんの?」  ええぇ!と自分で自分の頬を挟み込んで栗頭の少年が顔を近づける。  可愛くねぇよ。 「先輩って意外と天然なんですか? あんなに先輩の噂立ってるのに?」 「え!?」  噂という言葉にドキリと俺の心臓が飛び跳ねる。  まさか俺がヤクザの分家で、しかも学園の生徒。折り紙つきのゲイだということがばれてしまったのかと、一瞬頭の中にその文章がよぎった。 「2年の先輩に可愛い先輩がいるっていう噂です……そして、それが藤森悠斗先輩ってことですよ」  近づいてくる顔がニッと笑みをつくる。  一向に止まる雰囲気はなく、悠斗は少しづつ後ろに後づさるが、そのうちトンと後ろの壁に背中がぶつかった。  なおも、その顔は近づいてくる。  まぁこれが普通の男なら、なんともないと思うけど、俺は… …俺にとっては恋愛対象なんだよォォォオ!  しかも、結構カッコイイ。  ってうおい!  俺には好きな人がいるんだよ!   ん?  まぁそれはまたあとでいいか? 「ちょっと……離れろ! それに可愛いって男に使う言葉じゃないっての!」  ぐっと手でその顔を押すと、意外とすんなりとその顔は離れていった。  ホッと悠斗の肩から力が抜ける。 「えー? そうかなぁ?」  おどけたような声が聞こえたが、これ以上は時間の無駄だと気付いた悠斗は無視して、好きなように散らばっていた9人を席に座らせる。 「はい。じゃあこれから、学級委員のことを学校の行事と合わせて説明していきます」  始めるとすんなりとことは進んでいった。  もともと学級委員長になるだけあって、みんなが有能であることは確かだった。  言ったことはすぐに理解しているみたいだし、メモしろと言ったことはちゃんとメモしている。  なによりしっかりとこっちを向いて話を聞いていることに感心させられる。
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