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「分かった。分かった。ちゃんと考えておくから、お前はもうさっさと帰れ」
追い出すようなきつい口調で言いながら、栗頭の手を取ってとりあえず椅子から引きはがす。
そのまま教室のドアまで引っ張ろう。
「全然わかってませんよ」
同時に、掴んでいた手が逆に掴まれて引っ張られた。
ポスっ
俺の頭が、栗頭の胸板に押し付ける状態になってしまう。
固いその感触。
スッと鼻を通る洗剤のさわやかな匂いは、今俺を抱きしめているのが男であるということを実感させやがる。
ブンッと俺は両手を振り上げて栗頭を押し返すが、今度はさっきのようにすんなりとは離れない。
逆に振り上げた手を宙で一まとまりにされ……
ぐるりと、俺の視界が回り、背中に固い机に打ち付けられた反動がくる。
痛みに身をよじり、気が付くと、俺は手を一纏まりにされ、机に縫い付けられるような格好になっていた。
もちろん、学園に通っていた悠斗なら、この体制がどんなことなのは十分想像できる。
汗がひやりと浮かび上がり、心臓は激しく飛び跳ねて息を詰まらせる。
ただ、そのことをしられたくないから、必死に心臓をおさえつけた。
グッと栗頭の顔がいきなりちかづく。
うぁあああっ
俺の全身からブワット汗がながれた。
「もう少し先輩は自重するべきです。先輩がモテたりしたら、俺のファンが減るかもしれないだろ? そんなこと、ぜったいにさせないから」
「は?」
なんだろう? 頭が全くついていけない。
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