二【春・出会ってしまった】

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「分かった。分かった。ちゃんと考えておくから、お前はもうさっさと帰れ」  追い出すようなきつい口調で言いながら、栗頭の手を取ってとりあえず椅子から引きはがす。  そのまま教室のドアまで引っ張ろう。 「全然わかってませんよ」  同時に、掴んでいた手が逆に掴まれて引っ張られた。    ポスっ  俺の頭が、栗頭の胸板に押し付ける状態になってしまう。  固いその感触。  スッと鼻を通る洗剤のさわやかな匂いは、今俺を抱きしめているのが男であるということを実感させやがる。  ブンッと俺は両手を振り上げて栗頭を押し返すが、今度はさっきのようにすんなりとは離れない。  逆に振り上げた手を宙で一まとまりにされ……  ぐるりと、俺の視界が回り、背中に固い机に打ち付けられた反動がくる。  痛みに身をよじり、気が付くと、俺は手を一纏まりにされ、机に縫い付けられるような格好になっていた。  もちろん、学園に通っていた悠斗なら、この体制がどんなことなのは十分想像できる。  汗がひやりと浮かび上がり、心臓は激しく飛び跳ねて息を詰まらせる。  ただ、そのことをしられたくないから、必死に心臓をおさえつけた。  グッと栗頭の顔がいきなりちかづく。  うぁあああっ  俺の全身からブワット汗がながれた。 「もう少し先輩は自重するべきです。先輩がモテたりしたら、俺のファンが減るかもしれないだろ? そんなこと、ぜったいにさせないから」 「は?」  なんだろう? 頭が全くついていけない。
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