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 俺が仕事を辞めて、もう一ヶ月は経つ。  再就職しようにも軒並み落ちてばかり。やる事が無いから、一日中酒を飲むようになっていた。  酒で昼夜逆転した生活。  この日の夜も目が冴えてしまい、俺は酒を買った帰りに河原を散歩していた。  首都高の外灯がオレンジに輝き、川と交差している所が水面に映る。深夜とは思えない明るさで、昼夜逆転しているようだった。  俺は、歩きながらコップ酒を開けて飲んだ。  河原での歩き酒もオツなものだ。    キャハハ……。  女性の笑い声?声がした方向を見る。  小さい橋があった。  その下から確かに聞こえる。  女の子の、何かがぶちギレたような笑い声。  橋の下にはスポーツバイク。  俺は、土手を降りてみて堤防に降りてみた。  橋の下に誰かいる。若い女性の声だろう。  俺は、橋の下に向かって声をかけてみた。 「ねえ! キミ独り?」  我ながら、ナンパみたいな情け無い声。  笑い声が止んだ。女性の影。  俺は、橋の下に入ってみた。  俺の背では頭が当たる高さだった。仕方ないので腰をかがめてヨタヨタと進んだ。  誰? と声がした。  マトモだけど呂律が回っていないようだった。  酒の匂いがした。 「そっちこそ何やっているんだよ」  俺も返事するが、今更自分も呂律が回っていない事に気付いた。  飲み過ぎているなと思った。袋が地面を擦れてガシャガシャ音を立てている。  橋の下は暗黒。  懐中電灯を持っていないのもあるが、彼女を照らしているのはスマホだけで影でしか分からない。 「ねぇ、そこの自転車ってあんたのか?」  うん、と彼女は答えた。声が艶っぽい。 「それって、酒?」  そうだ、と答えた。 「よかったら、飲む?」 「ありがとう、助かるぅ! 手元に無くて困ってたのよぉ!」  真っ暗で分からないのによくそんな事を。  そんな俺の考えを読んだのだろうか。 「あたしだって同じなの。どんな奴が来たんだかわからない訳だし。レイプされるかもしれないじゃない。そんなの分かる訳ないじゃ無いの」  図星。俺もこの女が分からない。逆に殺されるかもしれないのだ。
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