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「俺、ショーイチ、仕事を辞めてプータローやってる。君は? 」 「ヒバリ。あれで旅行してんの」  自転車を指差した。  見え透いたテキトーな名前。  美空ひばりかよ。もう少し考えろよ。  まあ、いいか。 「何がいい?」 「チューハイ無い?」 「レモンでいい?」 「サンキュー!」 「カンパーイ!」  俺はライム。 「乾杯!」  暗闇の中でカチン、と鳴った。  ゴキュって、喉を鳴らす音がする。  橋の下の暗黒。  ヒバリと呑んで大分時間が経った。  そこに、弱い光に照らされたバッグがあった。  中に一杯の札束が入っていた。 「人を殺しちゃってさ、札束を奪って来ちゃったの」  おいおい、強盗殺人じゃねえか。 「一人暮らしの金持ちのお爺さんと知り合ってさぁ、愛人になってあげるって言ってやったら、即コロリよ。面倒になってきたから殺しちゃった。ホンッと、退屈しないのよね。お金にも困らないし♪」  ヒバリは俺を見てニッと笑った。  冷たい刃のような笑い。バサッと斬られそうだ。 「男ってね、みんなバァカ! あたしっていう美少女に口説かれてさぁ、簡単に落ちるんだもの。あたしにとって男は、みぃんな使い捨てみたいなもの? よねぇー」  目の前の女は一体何者だ?   暗闇で女の姿は見えなかった。見えない怖さ。何者か分からない怖さ。暗黒の中の恐怖。  俺も殺されてしまうのか?  抱き締められた。 「逃がさない……♪ 」  ねっとりとした声。  俺は叫ぼうとしたが、出来なかった。  俺の唇には、女の唇が重なる。  熱い。でも氷のように冷たいキスだった。その時唇に針でも刺されたのか、チクっと痛みが走る。  俺は意識が朦朧として……、後はもう、覚えていない。 669e35f8-107f-4f44-9285-50c35ac83348  
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