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会社にて
ユニバーサル・クラウド・ロボティクス社では、ハイエンドモデルのロボットも作っている。需要はぼちぼちであり、クレームはそこそこであった。
「私、カスタマー担当のシャイア・レイモンドと申します。お客様の満足のために、できる限りお力添えをいたします」
レイモンドは手元の問診票と、目の前の女とを交互に眺めた。
女は露出が激しかった。肩、というか鎖骨あたりまで剥き出したトップスに、切れ目からヒゲのような繊維が生えた超ショートパンツを履いていた。
目のやり場に困る。
カスタマーは十人十色だ。威圧的なフットボウラーから今にも臨終しそうな老婆まで──文字通りの三者三様・十人十色・千差万別。解散後は三々五々。同じタイプの人間は誰一人としていない。
女は、十人十色の十一人目という印象だった。クラブで踊り狂っていても全く違和感のないメイクと風貌で、ロボットにはつゆほどの興味もなさそうに見える。カスタマーサポートでも滅多にお目にはかかれまい。
その横には、女と同じ髪と瞳の色をした中年の男が控えめに座っていた。細身で、無表情だった。先ほどから一度もまばたきをしていない。
一通りカスタマーの様子を確認したところで、レイモンドは再び問診票に視線を落とした。
「えー、ミス・メイ・スコット。弊社のロボットに欠陥があるとのお問い合わせでございましたが、具体的にどのような動作不良がありましたでしょうか」
「怒ってくれない」
「はい?」
「怒ってくれねえっつってんだよ!」
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