会社にて

1/5
前へ
/6ページ
次へ

会社にて

 ユニバーサル・クラウド・ロボティクス社では、ハイエンドモデルのロボットも作っている。需要はぼちぼちであり、クレームはそこそこであった。 「(わたくし)、カスタマー担当のシャイア・レイモンドと申します。お客様の満足のために、できる限りお力添えをいたします」  レイモンドは手元の問診票と、目の前の女とを交互に眺めた。  女は露出が激しかった。肩、というか鎖骨あたりまで剥き出したトップスに、切れ目からヒゲのような繊維が生えた超ショートパンツを履いていた。  目のやり場に困る。  カスタマーは十人十色だ。威圧的なフットボウラーから今にも臨終しそうな老婆まで──文字通りの三者三様・十人十色・千差万別。解散後は三々五々。同じタイプの人間は誰一人としていない。  女は、十人十色の十一人目という印象だった。クラブで踊り狂っていても全く違和感のないメイクと風貌で、ロボットにはつゆほどの興味もなさそうに見える。カスタマーサポートでも滅多にお目にはかかれまい。  その横には、女と同じ髪と瞳の色をした中年の男が控えめに座っていた。細身で、無表情だった。先ほどから一度もまばたきをしていない。   一通りカスタマーの様子を確認したところで、レイモンドは再び問診票に視線を落とした。 「えー、ミス・メイ・スコット。弊社のロボットに欠陥があるとのお問い合わせでございましたが、具体的にどのような動作不良がありましたでしょうか」 「怒ってくれない」 「はい?」 「怒ってくれねえっつってんだよ!」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加