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今日も天気がいい。
よく晴れた朝。
朝から、また面倒な電話の応対だ。
「はい、はい。ですからウチは問題ないですよ。回収?処分?いや、いや、必要ないですよ。ひとり暮らしには慣れてますからね、はい、はい、まともな人間生活?いや、いや、全然不便でも何でもないですよ。ひとり暮らしで全く問題ないですから…」
しばらくして電話は切れ、僕はさっそく朝食作りに取り掛かった。
今日の朝食は僕が作る。
「さあ、出来たよ」
得意料理というほどではないが、スクランブルエッグとこんがり焼いたカリカリベーコンを作った。
テーブル席に座る彼女と彼女の前に、僕の作った朝食を置いた。
「さあ、召し上がれ。お口に合うかどうか」
僕も席に着き、スクランブルエッグとカリカリベーコンを食べた。
「うーん、我ながら、まあまあイケてるかな」
しばらくしてトースターの中のトーストが焼けた。
「君はエシレバター、君はマーマレードジャムが好きだったよね?」
僕は二枚のトーストに、それぞれ二人が好きなバターとマーマレードジャムをぬって、彼女と彼女の前に出した。
「さあさ、召し上がれ」
そう言いながら、僕もピーナツバターをぬったトーストを頬張りながら、熱いコーヒーを飲んだ。
二人を見た。
まだ涙は消えていない。
泣く事なんかないんだよ
「今日もキレイだね。二人とも。またキレイになった」
最近、無口にはなったけど
彼女たちは美しい。
またキレイになった
たとえ動かなくなっても
彼女たちは美しい
いつまでもキレイなままだ。
それで僕は
すべてが満たされる
これ以上、何を望むというのか?
また、キレイになったというのに。
今日は一日快晴が続くらしい。
陽の光が、窓辺から射し込む。
美しい彼女と彼女が
さらに一層
キレイに見えた。
人間には解るまい…。
彼女と彼女は
またキレイになった
人間に
解らないことなんて、
この世には
幾らでもあるのだ
彼女と彼女は
今日もキレイだ
(終)
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