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私はもう キレイとは言い難い そういう時期が来たのだ ただそれだけ でもあの人は 今でも 私を見るなり キレイになった と言ってくれる。 真っ直ぐに私を見て、 屈託のない笑顔を浮かべて、 キレイだと言ってくれる でも 私はもう ここにいられない そんな気がする さっき とてもキレイな大人の女性が 私に挨拶に来た この部屋には入らないように言われていたらしいが 最後の挨拶に来たと言った。 とは言え、今まで会ったこともない女性だけど。 「ごめんなさい。部屋に入り込んだりして」 「いいえ。あの、はじめまして、ですよね?」 「そうね、はじめまして。でも、これでお別れだから。どっちかというと、さよなら、かな」 「そうですか」 「私はいなくなるけど、あの人のこと、どうかよろしくね」 「あ、はい…」 「あなたキレイね」 「ありがとうございます。あなたもかなりおキレイです」 「ありがとう。それじゃあ。はじめましてだけど、さよならね。お元気で」 「はい。お元気で」 キレイな大人の女性は、すぐに部屋を出て行った。 私はもうすぐ キレイじゃなくなると思う 自分でわかる。 もうキレイではいられないと思う。 あの人と一緒にいる時は せめて、キレイでい続けたいけど… でも、それも もう無理… もうキレイではいられないと思う…
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