1

1/12
前へ
/19ページ
次へ

1

 レコーディングの合間、はちみつミントティーを啜って喉を休めてると、何となしに持ってたスマホがぶるっと震えた。  画面を見ると、新着メッセージの通知。 「あ、ママだ」  俺が呟くと、隣でデリバリーのお寿司を摘んでたドラムの夕さんが俺をちらっと見る。 「おっ、綺悧(あやり)ママか。元気か?」  綺悧って言うのは俺のステージネーム。  夕さんは、俺のママが好みのタイプなんだって。  若い時から、ヴィジュアル系バンドを追いかけるバンギャ道を貫くママは、いつもイキイキしててキラキラしてるから、俺の自慢。  そんなママの一人息子の俺は、ヴィジュアル系バンド・ベルノワールのヴォーカリストになっちゃった。 「うん、元気だよー。何だろ」  画面を開いてみる。「おはよ、今電話出来る?」って。バンギャなママの挨拶は、何時であろうとおはようだ。  休憩入ったばっかりだし、電話出来るかな。  さっき録ったテイクをチェックしてる俺の神様、リーダーの宵闇さんに声をかける。 「宵闇さん、ママから連絡なんですけど電話して来ていいですか?」  宵闇さんは、俺の方を振り返る。 「ああ。構わない」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加