miu

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『みうちゃんと一緒に帰ると ぜーったい雨だし、帰るまでやまないからやだ!』 いつもこの言葉を言われてた子供の頃。 お母さんに聞いたっけな。 「なんでみうって名前なの!?」 泣きながら八つ当たりのように わめきちらしたな。。 「みうの名前は美しい雨で美雨。雨のあとには綺麗な虹がかかるでしょ?雨は素敵なものなのよ?」 悟すように頭を撫でながら、あたしに言い聞かせてくれてたな。。 山内美雨 小学5年生の時だった。 苗字が「やまうち」名前に「雨」 男子からは、やまない雨ってからかわれてたな。。。 本当に、この名前が大嫌いだった。 この名前のせいで、梅雨になると必ず 仲良しの女の子までもが、あたしと帰ること、遊ぶことを嫌がってた。 ひどいときは、遠足にも来ないで! なんて言われたっけな。。。 あれ? 誰だったっけ 一人男の子が、あたしの味方をしてくれてたんだけど、、、 名前が思い出せない。 誰だったかな。。 そんな昔の記憶が蘇ってきた雨の日の午後。 山内美雨 25歳。 強く生きてる。 あの頃泣いて、自分の名前を嫌ってた自分を乗り越えて。 「けどやっぱりあたしが何かをしようとすると、雨降るんだよねー。。」 突然の通り雨のせいで、コンビニに駆け込む。 今日は大事なプレゼンがあるから 15時までには先方の会社へ行かないといけないのに。。まさかの雨! 「傘、ないんですか?」 見上げるほどの身長差のある男性が こちらを覗き込む。 「あ、、いや、、」 「コンビニで傘買おうと思った!正解でしょ?」 笑顔で話しかけてくる。 「そうなんです。。けど、売り切れてますね。。」 この通り雨で、みんなが傘を求めたから すでに売り切れーー 「これ、今買ったやつなんであげますよ!」 「えっ!?でも」 受け渡す傘を押し返そうとすると、男性は笑顔で指を刺した。 「僕、すぐそこが会社なんで。大丈夫ですよ」 「でも、、」 男性は、屈託のない笑顔で手を振る 「じゃあ、貸します!また返してくれたらいいですよ!」 そういって走り去った。 どしゃぶりの中を。。 「返すって、、いつ返すのよ?」 と、そんなことより早く行かなきゃ!! 借りた傘をさし、窮屈そうな音を立てるパンプスで早歩きをする。 無事に先方の会社へ到着。 やっぱり雨はやまなかった。 「山内さんですね?聞いております。 二階会議室へどうぞ」 会議室へ通され、しばらくプレゼンの書類確認をする。 扉の向こうから軽快なノックが聞こえた。 「おまたせしてすみません。」 「あ!!」 「山内さん。」 にっこり微笑むのは、あの傘の男性だった。 「どうして私だとわかったんですか??」 すると、男性は苦笑いをしながら言う。 「僕のこと、忘れたの?ひどいなぁ」 「え、、?」 『七瀬。架橋七瀬。わからない?』 遠い記憶が蘇る。。 あの頃味方してくれてたのはーー 「やまうちが、やまない雨ならさ、 ぼくとやまうちが将来結婚したら、かけはしみうになるよ?ぼくの名前のななせは、虹の意味があるから。あめとにじ、かけはし!よくない?」 思い出したーー 「七瀬くん。。かっけん、て呼ばれてた七瀬くん!」 「正解!お見事ー!」 頭を撫でながら笑う七瀬くん。 「山内、変わってないからすぐわかったよ。山内の会社の社内報みせてもらったときに、一目でわかったから、このプレゼンの担当をぼくに回してもらったんだ。」 窓際から雨上がりの光が差し込む。 「ほらね?やっぱりぼくと山内だと雨と虹なんだろうな」 押さえ込んでいた何かがはじけていくのがわかった。 そうか。 あたし、七瀬くんが大好きだった。 七瀬くんが転校してから連絡先もわからなくて、でもずっとずっとあたしの中で 七瀬くんは居たんだーー 4年後ー 「架橋さーん。架橋美雨さーん。」 白いベッドに横たわる。 先生からの言葉 「男の子ですねー」 私達は、交際を経て結婚。 七瀬と、あたしに新しい命が授かった。 出産前にどうしても先に性別が知りたくて 先生に聞いてみた。 「七瀬!男の子だって!」 夕食時に七瀬に話すと笑顔でお腹をなでる。 「そうかそうかー!もう、名前きめてあるんだよー」 「早くないっ?それに、女の子だったら名前どうするのよー?」 七瀬は紙とペンを持ってきた。 「男の子なら虹輝。女の子なら優雨。」 あたしはすぐに納得した。 虹が輝くーー こうき。 優しい雨ーー ゆうみ。 七瀬らしいなって。 やまない雨が やんだあとには 虹の架橋が、私達を繋いでいくんだなって。
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