放課後の花壇で魔法を

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 高校二年生の五月。  あの頃は四月に自転車で通学途中に不注意な車にぶつかられ足を骨折する大けがをしていた。一週間ほどで入院生活からは解放されたものの、せっかくレギュラー入りしていた部活のバスケットボールをしばらく休まざるを得ず、ちょっとふて腐れた気分だった。 「おまえ脳筋やから、この機会に勉強に励んだらええねん」 「はぁ? 俺より成績悪いやつらに言われたないわ!」  と、悪友たちとは言い合ったが、誠司の全般的な成績もぎりぎり平均点を超えられる程度で特に良いわけではない。  担任からも苦手教科に力をいれたほうがいいと言われていたこともあって、怪我が治るまでの間は放課後真面目に図書室で自習することにした。  ふて腐れと勉強疲れと。  そんなものを抱えながら、事故の時の車の運転手が手配している、通学のためのタクシーが待つ校門へ、松葉杖を突きながらひょこひょこと向かっていたある日のことだ。  花壇の横にしゃがんで誰かが作業をしていた。  相手が制服だったことでなんとなく気になった。通りがかりに顔を窺ってみる。 「あれ?」  顔を確認して誠司の口から間抜けた声が出た。  誠司の声に気づいて向こうも顔を上げる。そして誠司の顔を見ると笑いかけてきた。 「なんや、多田やん。今帰り?」  それは同じクラスの(ささ)()(ひろ)()だった。
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