雨の境目

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雨の境目

 オフィスで、彼女と、二人きり。  同期の彼女と、二人きり。  僕は、彼女が、好きだった。  そんな彼女と、二人きり。  ドキドキせずには、いられない。  たまたま残業することに、彼女と二人ですることに、今日の流れさ、ラッキーさ♪  今は梅雨時(つゆどき)、やまない雨さ♪  彼女は手持ちの傘がないッ!  残業終わりにゃ、送ろうか! 「駅まで送るよ、入りなよ♪」  相合い傘で、送ろうか♪  ムフフッ♪ と、ニヤケる心を抑え、静かに、「神様、ありがとーッ!」  一念発起(いちねんほっき)で、声掛けてみた! 「ちょうど、このビル、境目(さかいめ)みたい♪」 「『境目みたい』て、何のこと?」 「そっちと、こっちの、窓見てみてよ!」 「そっち晴れども、こっち雨?!」 「そういうことなの、()しからず」 「どういうことなの? 分かりやせん!」 「私の駅へは、晴れてるの♪ だから、一人で帰れるわ♪ お心遣いありがとう♪ あなたの駅へは、雨なのね♪ 土砂降りだから、気をつけて♪」  うちの会社の最寄りの駅は、そっちと、こっちと、二つあり、雨の境目、このビルらしいッ!  そんなことってあるのかよッ!
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