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 手を握り背を向ける勝。顔だけ横にして青木の目をニヤニヤしながらみている。  青木は気持ち悪くなり手を振り払った。そして勝の背中を軽く押した。  勝はニヤニヤしたまま崖の下へと落ちていった。青木の手は少しだけ震えている。 「青木くん、なにやっているんですか!」  笹山が勝の行方を見にきた。崖の下をのぞいている。なんとなく、コイツも押してしまったほうがいいのではないかと思った。 「あっ…」  勝を追いかけるように笹山も崖の下へと消えていった。  青木は不思議と冷静だった。  勝は気持ちが悪かったから押した。  笹山は生かしておくのは不利になるから押した。  人は高い所から落ちる時、叫び声は出ないものなのだと感心した。二人を落としたことは悪かった。けど、どうせこの崖なら死体はあがってこないだろう。  青木はもうここにいても意味はない、そう思い崖をあとにした。
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