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 あれは高校の夏 私は 将棋部のエースとして 地元では 指折りの実力者として名を上げていた。  他校との親善試合でも 地域の大会でも負け知らず 誰が相手でも負ける気がしなかった。 そんな思い上がりもあって 将棋はツマラナイものだ、と(タカ)(くく)り プロへの道を拒絶していた。  そんな私の目に ある中吊(なかづ)り広告が留まり 言い知れない感情が芽生えたのが分かった。  〝17歳の天才棋士 その素顔に迫る〟 私と同じ年齢(とし)で 私よりも人気がある棋士がいることに 嫉妬(しっと)なのか怒りなのか (わだかま)り か (いきどお)り か 言い表せない気持ちが錯綜(さくそう)する心を 抑え切れなくなった私は すぐさま(くだん)の天才棋士のいる高校へ向かった。
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