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 私も名の知れた棋士だった事から 〝彼〟との対局は すぐに実現する運びとなった。  対局場所は 私のいる将棋部の部室 時間は ある夏休みの日の昼下がり。  しかし 対局を前にして高揚する私をよそに 〝彼〟は なかなか部室に現れなかった。  しばらくして入った連絡により 移動中の事故により 〝彼〟は その短い生涯を終えた、と知ることとなった。  私は泣いた ひたすら泣いた 気が付けば 辺りは すっかり暗く 夜の(とばり)の中 部のメンバーも帰り 顧問の先生と2人だけになった室内 どうしても諦めきれない気持ち そして 亡くなった〝彼〟への(とむら)いの気持ちから その日は 部室に泊まらせてもらえるよう頼み ジッと静かな時間(とき)を過ごした。
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