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 あれから20年以上 時は過ぎ 我が母校には 七不思議のひとつとして 〝将棋部の笑う棋士〟というものが広まっている。  実は 寝ぼけ(まなこ)ながら 顧問の先生も 私達の対局を目撃していたことで広まった話が いつしか七不思議のひとつとなって 語られ続けられる事になったのだが この話には 私だけが知る〝続き〟がある。  それは 〝笑う棋士〟として 七不思議に数えられることになった 天才棋士の〝彼〟が もう私の母校だけの存在ではない、という事。  あの夏の日 ずっと彼と対局し続けた私だけの秘密。  『将棋の未来を守ってくれる後進を見届けてから成仏したい』 〝彼〟からの遺言染みた別れの言葉に 半ばショックはあった 未来を託すなら私に任せてくれ そう考えてしまうこともあった しかし 〝彼〟の言葉の意味を理解した時 私の人生は決まった。
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