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 仲良くしてくれるのは楽しい。それからは時間を忘れて3人と遊んだ。それは都会に居てはやらないけどそういう遊びがあるんだよって聞いたものだった。 「それで何をするんだ?」  俺はタクミに問いかける。彼がこの3人でリーダーっぽく感じたからだ。最初に話しかけた時もそうだったし。 「今やってたのはメンコだ。自分のは持ってるか?」  タクミはそう言って彼が持っている板を見せつけてくる。そこには船に乗り、網を海に投げ入れている男の絵が書かれていた。 「何それ、ないないやったことすらない。聞いたことはあるけど」 「マジかよ。俺らが行ってる島でも皆やってんだぜ?しょうがねぇな。おい、ケン」 「うん。じゃあ最初はやって見せるよ」  二人はそう言って砂浜に置いてある小さな長方形の板を間に挟んで立った。その板は10枚くらい乱雑に並べられている。 「まずはこうやって向かい合う。それから最初は説明だから僕からやるね。それぞれのメンコを持って地面のメンコにぶつける!」  ケンが地面に置いてある物と同じようなメンコを持ってそれを地面のメンコに叩きつけた。彼のメンコは刀を持った男性が描かれていて強そうだ。  パシィという軽い音と共に叩きつけたメンコが浮いて叩きつけられたメンコがひっくり返る。 「おお。そんな簡単にひっくり返るもんなのか」 「今回は偶々だね。で、こうやって交互にやっていってより多くの板を取った方の勝ちだよ」 「おー面白そう。俺もやっていい?」 「勿論だよ。でもメンコは持ってないんだよね?」 「持ってない・・・何処で買えるんだ?」 「南の方の駄菓子屋は分かる?あそこで買えるよ」 「おお!昨日行ったけど金持ってなくて何も買えなかったんだよ。丁度いいから行ってくる」 「待って待って」 「?」  ケンが教えてくれた情報を元に買いに行こうとするとミカが止めてくる。 「私はあんまり得意じゃないから私のを貸してあげる。それで今は遊びましょう」 「いいの?」 「うん」  ミカはそう言って自身のメンコを渡してくる。その絵柄は女性が着物の服をはだけているようなものでちょっと換えたいと思ってしまったがそれは言わなかった。 「ありがと」 「どういたしまして」  素直にお礼を言うと彼女がとっても眩しい笑顔で返してくれる。 「それじゃあ三人でやるか」 「そうだね、でも手加減はしませんよ?」 「望むところだ」  それから3人でメンコをやり始める。ミカだけはそれを楽しそうに眺めていた。 「くっそう負けたー!」 「俺達はこれでもずっとやってるんだぜ?今日始めたばっかりの奴には負けねぇよ」 「僕達に勝ちたいならもっと練習することですね」 「もう一回だ!」  俺は全ての戦いに負け続けていた。時々一枚とかはひっくり返せるのだが、彼らの方が圧倒的に成功率は高かった。 「流石にあちぃよ。海に入ろうぜ海に」 「そうですね。一回入りましょう」 「ちぇー分かったよ」  タクミとケンは服を脱ぎ捨てるとその下からは水着が出てきた。そしてさっさと海に飛び込みにいく。 「ミカは行かないの?」  動かないミカに俺は問いかける。 「そうね・・・折角だから行こうかしら」  彼女はしゃがんでいた脚を伸ばし立ち上がるとワンピースを一気に脱ぐ。その下には学校の女子が着ている水着を着ていた。  俺はその光景を黙って見ていた。 「さ、行きましょう」 「う、うん」  俺は彼女に誘われるままに服を脱ぎ捨てパンツ一枚で海に入る。海の水は火照った体を鎮めてくれた。 ****** 「じゃあまた後で!」  それから俺達は海に入ったりメンコをして遊んだりを繰り返した。そしてそろそろお腹が空いたなって時に一度解散しようという事になる。お昼を食べてからまた海に集合ということだ。 「またなー!」「また後で!」「またねー!」  3人は家もほとんど近くらしく一緒に帰っていった。少し寂しさを感じつつも家路を急ぐ。早くご飯を食べてあの駄菓子屋にメンコを買いに行くんだ。 「ただいま!」  門を通るなり挨拶するが祖父は草むしりをしていないようで庭には居なかった。となれば中だなとばかりに居間に行くと3人が座り既に食事が始まっていた。  母が素麺を啜り終える。そして音で俺に気付いていたのかこちらを向いた。 「お、やっと帰ってきた。お帰りー」  食べながらでも器用に話すなと思いつつもまずは祖父に話しかける。 「じいちゃん!金くれ!」 「おう?唐突にどうした?」 「さっき友達が出来てさ!皆自分のメンコ持ってるのに俺だけないから欲しいんだ!」 「なんだそういうことかそれならとっておきのがだな」 「あなた。そんな古い物を上げようとするんじゃありません。新しいのがいいわよね?」  祖母は分かっているようでお古をくれようとする祖父を諫めてくれた。 「なんだなんだ。いいじゃねえか。ちゃんと勝てるように改造してあるんだぞ」 「そんなので勝っても嬉しくない!」 「おぉ、そう言われると弱いな。金はやるからまずは飯だ。手を洗ってこい」 「はーい!」  俺は急いで手を洗ってから戻ってくる。  戻ってくると母が俺の分の汁をお椀に入れてくれていた。 「ん」 「ありがと」  母さんに礼を言ってせっせと食べ始める。麺は側に置いてある氷のお陰か冷たく体の中にスルンと入っていく。汁の中にはシソが入っていたりしてちょっと苦めだったけどそれはそれで時々いい味を出していた。 「ごちそうさまでした!じいちゃん金!」 「忙しいな、おい」  祖父はそう言いながらも俺に1000円札を渡してくれる。 「ありがとう!」  俺はそれをポケットに仕舞い込むと急いで駄菓子屋に向かった。 「元気な奴というか・・・現金なやつというか・・・」 「私の子でしょ?」 「だなぁ」「だねぇ」  その会話は大地に聞こえることはなかった。
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