エピローグ

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エピローグ

店先の紫陽花は雨に濡れていた。 広瀬(ひろせ)真樹(まさき)は木戸を開けると店に入った。 真樹が席につくと、 しばらくして吉岡(よしおか)貴洋(たかひろ)がやって来た。 2人は大学時代の友人だったが、 貴洋が結婚してからは、会うのは久しぶりだった。 乾杯をすると、 昔の懐かしい思い出話に花が咲いた。 ゼミの仲間でバーベキューをした事、 友達の応援で大学野球の応援に行った事、 当時はなんて事ないようでも、 今思えば、キラキラした思い出だ。 昔の話、今の話も語り尽くした頃、 貴洋のケイタイが震えた。 確認した貴洋の顔が少しハッとしたようだった。 「菜々ちゃん?」 「うん……」 菜々は貴洋の妻で、 2人は学生の頃から付き合っていたので、 真樹もよく知っていた。 「なんかあった?」 「いや…うん…」 ケイタイの画面から目を離さず、 貴洋は言いにくそうに話し始めた。 「菜々からなんだけど、  その…美香ちゃんがさ、  骨折して入院したらしい…」 上原美香は菜々の友達で、 学生の頃は、貴洋に菜々、真樹と美香の4人で よく遊びに行ったし、 美香とは趣味も合うので、2人でも 出掛けたりしていた。 「え、美香ちゃん? 大丈夫なの?」 「命に別状はないみたいだけど、  数日ほど入院って事みたい。  あまり詳しい事は菜々もわからないみたい」 真樹は動揺しているようだった。 顔も幾分青ざめているようにも見えた。 「おい、真樹、大丈夫か?  そろそろお開きにするか」 貴洋はそう言うと、 店員を呼び、会計をお願いした。 その間に貴洋はもう少し詳しい話を 菜々から聞き出していた。 「階段で滑って足を骨折して、  知り合いのいる大学病院に入院してるって」 「そうか、教えてくれてありがとう。  菜々ちゃんにもヨロシクな」 そういうと2人は別れた。
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