きみとぼくを統べる未来

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「この場はいいですけどね。外では控えてくださいよ」  さっと室内を見渡して言ったジュリアンである。  この場には国王と後ろに控える従僕、自分とその従者の四人しかいないことを確認したのだ。  部屋の外には近衛精鋭部隊の隊士が二人陣取っているが、彼らに中の会話は一切聞こえない。  今なら、ジュリアンの言葉遣いが幾分崩れてしまっていても、国王自身がそれに頓着しないからいいようなものの、もしここに執事や大臣の面々がいたなら即刻首が飛んでいたかもしれない。不敬罪として罰せられていただろう。それほど彼の口調は国王に対して軽々しいのだ。  しかしそれを国王が許しているのだから、官僚たちにとっては頭の痛いことである。  その国王は、来客のおかげで仕事を放っておけると思ったのか、にこやかにしゃべり続けていた。 「宰相のおっちゃん、いい人なんだけどな。ちゃんと話聞いてくれる人だし、あの歳でまだまだ現役で頭の回転が速い人でさ。けどなー、タリスと一緒で、ちょーっと一本気の強いところがあるんだよ。大目に見るっていうか、臨機応変に考えるっていうか、そういうことができない人なんだよな。だからまあちょっと口うるさいけど、おまえは真面目だからな、けっこう重宝がられてるんじゃないのか?」 「いやー。重宝がられてるというより、都合よくこき使われてる気がしますけど。でも楽しいですよ。政治的な駆け引きっていうんですか? 外交なんてお互い腹の探りあいじゃないですか。何かその、水面下で静かなバトルが繰り広げられてるっていう、あの緊迫感は傍で拝見していてドキドキしますよね。あれは見ててさすがだなぁって思いますね~」 「へぇ、アッキー、政治に興味あったのか。んじゃ変わってくれない? おれ外交ってさっぱりわかんないのよ。それに駆け引きなんかできる性格じゃないし」  頬杖をついて拗ね始めた国王を、ジュリアンは慌てて宥めにかかった。 「何言ってるんですか! 陛下の手腕は宰相さまも褒めてらっしゃるんですよ。あの観察力と洞察力はそう簡単には養えない。天性の能力なんでしょうなって、感心してらっしゃいましたからね。補佐のし甲斐があると喜んでらっしゃるんですから。だから僕に、将来そんな陛下を支えてあげられるように精一杯精進しなさいって、口すっぱく言われてるんですからね!」 「そんなの、あんまり褒められても嬉しくない……」
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