きみとぼくを統べる未来

4/7
前へ
/35ページ
次へ
「アキフェルリシェルさま。それは何の書類でございますか? 宰相さまから事前の通達はされておりませんが」 「えっ、ああ、うん。そうなんだけどね」  ジュリアンはナルに視線を移して苦笑しながら答えた。 「ナル。僕のことはジュリアンでいいって言ったのに……。で、これはね。僕が宰相さまに言って運ばせてもらったんだ。僕がお役目を引き受けますって」 「お役目? それは一体……」 「うん。ナルも後で見せてもらうといいよ。陛下、こちらをごらんください」  国王は、そっと書卓の中央に置かれたものを見て、また首を傾げた。  書類かと思いきや、厚紙に上等な布張りの表紙がついた、なかなか豪華な装丁の冊子であった。  置かれた三冊のうち、一冊を静かに開いた。  最初に眼に飛び込んできたのは、淡い色彩で描かれた肖像画であった。  女性が綺麗に着飾ったドレス姿で椅子に座して、こちらに笑顔を向けている。  国王はすぐに何かの記念画かと思った。  続いて一枚めくってみると、今度は立ち姿である。同じ女性で同じ服装をしていた。  さらにめくると、今度は丁寧な筆跡でずらずらっと文字が並んでいる。  何行も読むことなく、この冊子が何なのか想像がついた国王は、ぱたりと閉じて投げ出すと、「なにこれ」の一言で持って、乱暴に椅子に背中を投げ出した。  すばやく書卓を回り込んだナルは、国王の許可なく冊子を手に取った。  開いて小さく眼を見張った。そしてジュリアンを振り返る。 「これは……もしかして、お見合い書、でございますか?」  重々しく頷いたジュリアンを見て、ナルもまた重々しく息を吐いた。 「では、あれは全部」 「そう。宰相さまや他の閣僚方からお預かりしたものなんだ。とりあえずお目通ししてもらえと」 「くだらない」 「陛下」  低く呟いた国王に、ジュリアンは笑顔を向け、優しく語りかけた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加