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嫉妬が渦巻く酒の席
▪朝陽×白夜×弥一。
▪日常。微糖。
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普段とは違った寝酒の席。
目の前には愛してる女と、その元情人(いろ)と。
楽しい筈なのに。そこにふと沸き上がる苛立ち。例え二人の間に以前のような関係は無くとも、嫉妬は生じるもので。
目の前にいる男は、彼女の全てを一度は総取りして貪った。
それを思うと、肌と肌が密着するような絡みは見たくない。
「弥一さん、まだ飲み足りてないんじゃないですかぁ?」
「お前がな」
「私はまだまだいけますよぉ~だ」
「はっ、じゃあ俺のペースに合わせて飲めや」
「ふっふっふ……任せろぉ? このつきのみやびゃくや、たくさん飲ませて頂きますのだーっ!」
最早、彼女は酒に呑まれてぐでんぐでんだった。
それを横目に、普段は見せない穏やかな笑みを溢す弥一をまともな顔で見れない。彼の朱眼は一心に弥一を睨めていた。
「何だ?」
「別に。あんまり飲ませるなよ」
「コイツが勝手に自滅したまでよ。俺の責任ではない」
「してません。まだまだ滅亡しませーん」
「お前さんも飲むなっての。これ没収」
「ああっ!! 私のお酒があぁっ!」
酒瓶を取り上げれば、弥一から離れ自分の方へと絡み付いて来る。腰にしがみつき、とろんとした上目遣いで持ち上げた酒瓶に手を伸ばす姿は余りにも無防備で、無邪気で。
「お酒ぇ~」
「まだ飲みてぇのかよ……」
「はい、まだまだ足りてませんっ!」
ふと朝陽から漏れた溜息。そうした隙に酒瓶を奪い、彼女の杯に酒を注ぐ弥一に呆れる。だが、彼女はそれを見、御機嫌でまた男の隣へ行こうとする。それがまた一つ、嫉妬の芽になるからーー花になる前に刈り取ってしまおう、と。
「あっ……何でえぇ!?」
口に含み込み、有無を言わさず強引に抱えた彼女の頭。そうして奪った唇に、全て注ぎ込む。彼女の目が点になった。
「そんなに飲みたきゃ俺の口から飲めな」
「う、うぐぅ~……」
照れ臭そうに口を抑える彼女に消化されていく嫉妬心。
俺も大人げねぇなと苦笑した先、弥一が面白くない顔をしていたのは言う迄もない。
END
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実は弥一も白夜を独占する朝陽に嫉妬していたりしていなかったり。独占欲は人一倍強い弥一だからね、うん。
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