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夏空に馳せた恋情
▪朝陽if章より奏。
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もしも、いつか全てが終わりを迎えるのだとしたらーーこの刻み続けた想いは、何処にぶつければいいのかと。
触れることすら叶わなくなった想い人に、重ねた憂鬱。感傷。
そうして未練は幾重にも谺して、求められない結末を要求して来るのだ。彼女はもう、目の前にいないのに。
強い日差しが金眼を照らした。見上げた空は何処までも青くて、彼女の瞳を彷彿させる。夏特有の生温い風が、縁側で退屈を持て余す彼を柔らかく撫でた。
「眩しいな……」
目を塞げば、溢れ出した彼女の記憶に胸を抉られていく。
それでも、と。握り締めた固い錠で閉ざされたロケット。中には勿論、記憶を埋める彼女の写真が飾られている。
風鈴が運んだ音に、ふと滴る溜息。
終わりがないのなら、永遠を飾ればいいじゃないか、と。
そうして仰いだ空に、またも感傷を植え付けられて。
(なぁ姫……、お前はこの空をどう映しているんだろうな)
終わらせて堪るか。と、ふと漏らした微笑。
この曇りがない夏空こそが彼女へと続く道標。そう思えば、それだけで幸福が舞い落ちる。
彼はやっぱり、今日も今日とて彼女の魅力の虜囚まっしぐらだったとさ。
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相変わらず通常運転な奏。
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