道端の片手袋

1/1
前へ
/29ページ
次へ

道端の片手袋

▪過去作。創作友達とのお題小説。 ▪過去編より幼少期白夜×隼人。 ーーーーーーー 「……あ、」 野道に投げ捨てられ、ボロボロになった片方だけの手袋を前に、しゃがみこむ。 「何してんだ」 そうして視線を切に落とす少女に、ふとかけた声。 「次生まれ変わったら、ふたつでひとつになれますように」 感情もない、魂すらないものに手を合わせ「よし!」なんて、無邪気に笑う。それを見、隼人の口から漏れたのは、やれやれと言わんばかりの溜め息。 「バカだろ、お前」 「だって……、寂しいよ。私だって、隼人がいなかったらこうなってた」 少女らしくない微笑み。優しくて、まるで自分そのものを包み込んでくれるような。 ふと紅眼に映されたボロボロの軍手。散々に踏まれ、泥だらけで、穴だらけ。 そして何より“使用不可になり捨てられた”感じが拭えない。 「はいはい、」 確かに、なんて言えないから。抱き上げて、忘れさせるようにあやすしか出来ない。けれど、それがーー 「えへへ……隼人、大好き」 「どーも」 「うん、」 少女の一番の幸福。彼が一番、居心地の良さを感じる空気。 ……END
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加