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道端の片手袋
▪過去作。創作友達とのお題小説。
▪過去編より幼少期白夜×隼人。
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「……あ、」
野道に投げ捨てられ、ボロボロになった片方だけの手袋を前に、しゃがみこむ。
「何してんだ」
そうして視線を切に落とす少女に、ふとかけた声。
「次生まれ変わったら、ふたつでひとつになれますように」
感情もない、魂すらないものに手を合わせ「よし!」なんて、無邪気に笑う。それを見、隼人の口から漏れたのは、やれやれと言わんばかりの溜め息。
「バカだろ、お前」
「だって……、寂しいよ。私だって、隼人がいなかったらこうなってた」
少女らしくない微笑み。優しくて、まるで自分そのものを包み込んでくれるような。
ふと紅眼に映されたボロボロの軍手。散々に踏まれ、泥だらけで、穴だらけ。
そして何より“使用不可になり捨てられた”感じが拭えない。
「はいはい、」
確かに、なんて言えないから。抱き上げて、忘れさせるようにあやすしか出来ない。けれど、それがーー
「えへへ……隼人、大好き」
「どーも」
「うん、」
少女の一番の幸福。彼が一番、居心地の良さを感じる空気。
……END
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