裏側の事情

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 槙野が彼らとただ話すだけでは済まないとは思っていたが、実際、実力行使したと槙野は笑った。ストレスが溜まっていたのだろうか。  知り得た情報は少なかったが、彼らは何人かの仲介役の名前を知っていたらしい。大方脅して安値で薬を手に入れるために調べたのだろう。それか一方的な暴力で従わせたか。  委員長が出してきたコピー用紙に、槙野は数人の仲介役と思われる生徒の名前を書いている。  仲介役として名前が上がったのは四人。一年と二年が二人ずつだった。三年の名前が上がらないのは、卒業が近いからだろう。 「なるほどね、こいつらか」  書き出された名前を見て、委員長は心当たりがあるのか納得したように頷いた。名前と顔が一致したのだろう。二年だけなら覚えているが、一年はまったく知らない名前だ。 「朔は、平川と話をしてどうだった?」  委員長は言って、コーヒーを飲む。  ポケットに入れていた紙を出して広げテーブルに置くと、二人は身を乗り出してそれを凝視した。 「……これは、」  委員長は小さく溢した。やはり意味が分かったらしい。槙野は首を傾げている。  少し長くなるが、と前置きを加え、俺は平川真澄から聞いた話を二人に聞かせた。  話が進んでいくうちに驚愕の眼差しに変わっていく二人を見ながら、外界と仲介役の繋がりや受発注、配送などの入手方法まで、平川の話をまとめながら伝える。 「…長岡文也は仲介役ね」  一通り話を終えると、数秒間の沈黙のあと委員長が呟いた。手応えのなかった訊問に関して納得したらしい。 「じゃあこのリストは、」 「仲介役の生徒だ。名前は書けないが、学年クラスと出席番号を書いてくれた」 「まったく…朔ちゃん大手柄、やってくれたね。予想外な奴がいる」  感心の溜め息を吐く槙野と、数字の羅列だけで生徒の名前を弾き出した委員長。  やはり委員長も、予想外の生徒に注目したようだ。コピー用紙にリストの数字を写し、その横に矢印を付けて名前を書いていく。 「朔、あいつががひとつ分かった」  眉を寄せ、委員長はそう言ってコピー用紙を差し出した。  一年から三年まで順に書き出された名前を見ていくと、三年の所で頭の中が一瞬真っ白になった気がした。  隣で覗き込んでいた槙野が「なんだこれ」と信じられないような声で言う。  コピー用紙に書かれた三年の場所には、五人の仲介役の名前がある。そのうちの三人は生徒会役員の副会長、書記、会計の名前だった。それから文也と、風紀の副委員長が名を連ねている。  二年は六人、一年は三人で、一年以外は全員知っていた。  その中の各学年ひとりが、仲介と漏洩を行っていると言っていた。平川から貰ったリストには、米印が該当する人物を指している。  一年の中には槙野が得た仲介役のひとりが入っていて、二年では俺の親衛隊の副隊長が該当している。  そして三年は会計の出席番号の横に米印が付いていた。  
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