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終わりと始まりから
─── いつか、いつか、あのキラキラと輝いて見えた光景がまた戻れば良いと、何度考え、願い、求め、しかし現実を見ては絶望したのだろう。
「彼ら」はここに戻らない。
まるで初めからそうだったように、彼らの視線の先にはたった一人の生徒がいた。
俺を押し退け、大きな声で俺の存在を吹き飛ばし、彼らを丸ごと根元から引き抜いてしまった。
「生徒会」という花壇の中に咲いていた花たちはもう消えて、1本の枯れかけた花だけを残しただけだった。水も光も栄養もその「花」だった植物に与えられることがなく、ただ朽ちていくのを待つだけ。
大輪は毒を持っている。
感覚器官を、精神を、目を、黒く塗り潰してしまうような、とても強い毒を、口を開く度に振り撒いている。
解毒薬は、たぶん、ない。
カレンダーを見て思うのは、たった1ヶ月でこの狭い世界を変えた存在に対する何かでも、彼らに対する何かでもなく。
ただひとつ、今まで考えたことがなかったものだった。
俺はなんで、ここにいるんだっけ。
なんのために居るんだっけ。
なんのために動いているんだっけ。
それまでの自分はどこかへ行ってしまった。代わりに、能面のような表情の自分がここに現れた。
もう、笑顔とか涙とか怒りとか、何だろうそういう豊かな感情?興味?どうやって表してたんだっけ。一体俺は、何をして居るんだっけ。
『───もう、無理をしなくて良いんだよ』
親のように、彼は言った。
無理をしているように見えるのは仕方のない事だった。俺にとってあれは、地獄と同じだったのだ。
白い部屋で、彼は泣きそうに歪んだ顔で、小さく深く謝罪した。進路の事は心配しなくていい、と、先の事についても色々と手を尽くすという話を、彼はゆっくりと語る。
俺はただ、その揺らぐ瞳を見つめた。
光はなかった。意思も希望も欲すらも、きっと彼は感じ取れないだろう。思ってもいないことを感じ取れるわけもないのだから。
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