裏側の事情

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 平川真澄と別れ、その足で風紀室に向かう。別れ際平川はよく分からないことを言っていたが、その後「よい結果が出ることを祈ります」と笑って何も聞けなかった。  既に外は暗くなっていて、放課後からと言えどかなり時間が経っている。それほどまでに話に集中していたのだろう。  午後6時を過ぎていたが、携帯を見れば委員長から風紀室に居ると少し前にメールが来ていた。  文也は委員長に言ったのだろうか。自分が仲介役であるかどうかは分からないが、薬の入手方法や取引をした人物を問われているだろう。  文也自身が直接外界と取引をしたのだろうか。それとも別の仲介役を使ったのか。  仲介役だと知った俺の考える可能性としては前者だが、委員長は後者を考えているだろう。  槙野の言っていた心当たりも気になる。  タチの悪い連中、というのはやはり仲介役のことだろうか。それともまた別の方向から関わっているグループか。  どちらにせよ、話を聞かなければただの憶測だ。あまり意味はない。  ───会って話をしていて思ったが、平川真澄は俺が今の状態になった事だけを気にしていた。  生徒会に関しては何も言ってない。自分の行動で生徒会が分裂する事は分かっていたのだろうか。 「……とりあえず今はこっちだな」  平川がどこまで予測して行動していたのかは分からないが、彼は幾つもの先を予想しているように思える。  モヤモヤするほどではないし、詮索する気もなかった。  風紀室のドアをノックしてから入ると、定位置のソファで天井を見上げる委員長が目に入った。  そこには一人だけで、槙野の姿はない。 「文也は」 「手応えは微妙だった」  ソファへ座り聞くと、委員長は姿勢を直しながら溜め息混じりに言った。  やはり全ては吐かなかったか。  槙野の不在を問うと「もうすぐ来る」とだけ言って、委員長はコーヒーを淹れにソファを立つ。  少しの間をあけて風紀室のドアが開き、振り替えると不機嫌そうな顔の槙野がいた。その手にはビニール袋を下げている。 「お疲れ」 「あぁ」 「おかえり、槙野」 「うっせぇ死ね」  委員長の言葉と槙野の不機嫌具合に首を傾げると、槙野は忌々しいものを見るような目で委員長を睨み付けながら、溜め息を吐いた。 「飯買いにパシられた」 「ああ、だからその袋か」 「槙野は終わるの早かったからさ、お前待ってる間にひとっ走り」 「人使い最悪」  面倒臭がりな委員長らしいが、槙野が袋から出したのは殆どが甘いものだった。  疲れてる時は甘いものだよな、と言いながら委員長がコーヒーカップを手に戻ってくる。 「さて、とりあえず長岡文也に話を聞いたが、朔に薬を使ったのは認めたものの仲介役などに関しては分かりませんを突き通された。使った薬はランク分けすると、SSからEまである中のSS、一番強いやつだった。高額で入手困難なやつ」 「わざわざそこまでしてやるかよ…」 「普段大人しいヤツは爆発すると何しでかすか分からないからな」  大人しい、か。  平川の話を聞いてからだと素直に頷けない。  苦々しい顔をする二人に対して俺は無言でコーヒーを飲んだ。 「俺が当たったのは、仲介役からよくそういう薬を買ってる風紀のブラックリストに入ってる連中と、そいつらによく流してる一度風紀に潰されて監視対象の仲介役だ」  不機嫌さをそのままに、槙野が言った。  不良と称されたり、よく問題を起こしている生徒は基本的に風紀のブラックリストに入る。  問題を起こしやすい生徒は、槙野を目の敵にして喧嘩を売ってくる事が頻繁で、どこで何をしているのか大抵同じだから見つけやすいのだとか。  
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