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「…」
俺は後ろを振り返った。
山積みの酒瓶とゴミ袋、嗅ぎ飽きたアルコールの匂いが鼻腔を突く。
俺はスニーカーを履き、靴紐を強く結ぶ。黒いスニーカーに、白い紐が映える。
最後に、靴箱の隣に立て掛けられた鏡台を見た。濃い緑色の、薄い生地で作られたパーカーのフードを深く被った俺。腕時計。黒いズボンに、先ほどの黒いスニーカー。少々癖毛が目立つ焦げ茶色の髪、白い縁の四角い伊達眼鏡、黒い革製のマスク…フードと眼鏡とマスクをもってしても隙間から見える、青痣と切り傷。…こんなもんか。
俺はもう一度後ろを振り返る。
「…じゃあな」
俺はそう呟いて、玄関の戸を静かに開けて外に出て、ゆっくりと戸を閉めた。
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