30 錆びついた心

1/1
前へ
/79ページ
次へ

30 錆びついた心

――た、楽しいことですって!? それってつまり……愛を分かち合うという……  フォセカは心拍数が上がり、鼻息を荒くした。うっとりとソニアの手を待っていたが、フォセカに触れることもしなかった。 「パーティを開催しよう」 「……え?」  自分が求めていたものと違い、フォセカは拍子抜けした声を出した。 「そこで二人を抹消する」 「…………」 「フォセカちゃん?」 「……まぁいいですわ。それで?」  フォセカは椅子へ戻り、ソニアの策略を聞くことにした。 「フォセカちゃん主宰なら、王子である僕がいても、ローズやゼラが招待されても違和感はない。そこで僕がローズに近づき、外へ連れ出す」 「番犬のゼラがいるわよ」 「そこはフォセカちゃんが止めておいてくれ。その間に僕が仕掛けるから」 「ローズがソニア様と二人きりだなんて癪だけれど……最期だものね。許してあげるわ」  ロベリアが殺される姿を想像し、ふふふと笑みがこぼれた。 「私楽しくなってきましたわ。明日にでもパーティを開催いたしましょう!」  フォセカは使用人を呼び、パーティの準備をするよう命令した。急なことで使用人も驚いていたが、フォセカの命令は絶対だ。そして招待客も絶対だ。不参加は死を意味する。 「これで明日を待つだけだね。フォセカちゃん、今日は泊ってもいいかな?」 「えっ、それって……!」  コロッと乙女モードに心変わりするフォセカ。今度こそはソニアの言葉通りだと期待をした。 「宮殿、視察しておかないとね。僕の使用人も今夜来るように手配している。同じ部屋で構わない」  フォセカがローズを虐げていたこと、パーティの策に乗ること。ソニアには全て見通されていたのだ。ソニアは立ち上がり、部屋を出ようとしたが、フォセカが彼の袖を掴んだ。 「……ソニア様は私の部屋でもいいですのよ」 「……それはパーティが無事に終わったら、ね?」  表向きの姿に戻っていたソニアは、そっとフォセカの口に人差し指をあて、ウィンクをした。 「ソソソニア様っ……!」  フォセカは溶けていくように力が抜けいき、床へ座り込んだ。ソニアは部屋を去り、宿泊する部屋へ案内された。一目散にバスルームへと足を運び、フォセカの口へつけた指を洗っていた。 「汚い汚い……! 僕の綺麗な指が台無しだ! 何度も色目を使いやがって……気持ち悪い!」  何度も何度も石鹸を擦り、洗い流す。 「アルニタク………ピスキウム事件の犯人はお前らだと知っている。レポリスに罪を擦り付けやがったおまえらも許さない……レポリスが支配してやる!!!」
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

697人が本棚に入れています
本棚に追加