35人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
一.
「ねぇ、ミキの家、お母さんが二人いるの?
お父さんは?」
「え……?」
自分の家族が普通じゃないと気が付いたのは、小学校一年の春、初めてできたクラスのお友だちを家に呼んだ日のことだった。
そもそもうちはその二人の母のどちらも「お母さん」と呼ぶ風習が無い。
アカリとナナ。
物心付いた時からそう呼んでいた。
「ねぇ、うちはお母さんが二人でお父さんはいないの?」
お友だちが帰ってから二人に聞くと、
「そうとも言うね」
「まぁ一応あたしがお母さんで、ナナがお父さんなのよ」
「ふぅーん……」
少しすまなそうに笑って顔を見合わせる二人に、幼いながらにも何かを感じ取った私はそれ以上何も聞けなかった。
が、学校というのは残酷だ。
日常の課題も年中行事の数々も、どこの家にもお父さんとお母さんが一人ずついるという前提で構成されている。
その度に私は首を傾げ、やがて周囲にイジられ始め、泣いたり、闘ったり、結局泣いたりして、家に帰っては二人にひどいことをいっぱい言った。
「お父さんは!?
あたしのお父さんはどこにいるの!?
本当のお父さんは誰なの!?
あたしお父さんが欲しいよ!!
お母さんが二人なんておかしいんだよ!!
もう学校行きたくない!!
普通の家に生まれたかった!!」
毎日のように大泣きして暴れる私を、二人は一体どれほどの苦しみや悲しみを胸に、ずっと見詰め続けてきただろう。
やがて本当に不登校になった小四の私を、ある朝ナナがむりやり連れ出して、電車に乗った。
最初のコメントを投稿しよう!