太陽の台地

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 車に引き返してから30分経った。雨は一向に止む気配はなく、むしろ強まるばかりだ。ザァザァという激しい雨音が車の中にまで聞こえてくる。 「とんだ厄日だな。さすが13日の金曜日と仏滅と三りんぼうが組み合わさった日だけある」  運転席で響がそうつぶやく。 「で、どうするんだよ?一旦引き返して別な日にするか?」 「それはできない」  僕は映にそう答えた。美玲も拓巳も人気モデルだ。撮影や取材などスケジュールがほとんど埋まっており、他の日程でのブッキングはほぼ不可能だ。できたとしてもそれは1ヶ月2ヶ月先の話であり、それではひまわりが種になってしまう。僕たちがもしもハムスターだったらこれ以上ないくらいの大喜びをするだろうが、撮影ではそうはいかない。 「だとしたらバックをひまわりの花畑にすることにこだわらなくても……あ、そうか……」  響は納得の表情を浮かべながら口を閉じた。今回の作品のラストシーンにおいて、ひまわりは重要な役割を担っていた。 「日向と葵の気持ちが1つに結ばれることの象徴が向日葵(ひまわり)なんだ。このシーンがなかったらそれこそ、何のための映画なんだ?って話になる」  僕は頭を抱えながらそう答えた。 「だとしたら待つしかないか……ところで美玲さんと拓巳君は今日のケツカッチンは何時なの?」  映がそう尋ねると、 「私はとりあえず今日の夜までは空いてます」 「僕もそうですね。夜は一件用事があるんで無理ですけど、それまでなら……」  2人はこう答えた。 「撮影時間、移動時間を考えると、待てるのはあと30分までだな。おい天才監督さん、どうするよ?」 「よし!『アレ』をやろう!」  映の言葉を受け、僕は意を決してそうつぶやいた。 「えっ?」  響が怪訝そうな顔をするが、ここで引き下がるわけにはいかない。 「こんなこともあろうかと思って、例のモノは積んできてあるんだ」 「まったく……どうりで車が重いと思ったよ……」  響はため息をつくが、僕は至って真剣に答えている。 「まぁいいや。やるだけやってみろ。ただ、演者の2人にだけは迷惑をかけたらダメだぞ」  映が僕に釘を刺してきたが、そんなことはもとより承知だ。僕はハイエースの後扉を開けて荷物の紐を解いた。
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