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雨降って地固まる
「このひまわりに誓って、もう僕は逃げない。君のことを絶対にもう離さない」
日向はそう誓い、葵のことを抱きしめた。雨が降ってますます艶やかな色合いとなった向日葵が咲き誇っており、雲一つない青空に浮かんだ太陽が2人のことを暖かく見守っている。
「よし!カット!」
僕はそう声をあげると、映と響はそれぞれの素材チェックを始めた。
「OK!」
「こっちも大丈夫!」
2人の声を確認し、
「それじゃあラスト、山の上からのロングショットを撮るから、2人はそのまま残っててください」
僕は美玲と拓巳の2人にそう指示を出し、ハイエースへと乗り込んで山へと向かった。
「こう見てみると本当にすごいな」
三脚を立てながら映がそう言葉を漏らした。
「な?僕のロケハンもなかなかだろ?」
「まぁ監督、演出の腕は確かだからな。でもたまにブッ飛んだ行動をとるからこっちはヒヤヒヤもんだよ」
苦笑いしながらこんな憎まれ口を叩く映だが、なんだかんだ言って最高の映像を提供してくれる映を僕は素晴らしいパートナーだと心から思う。
「おい、見てみろよ!」
響がそう声を上げ、空に向かって指を差している。僕はその方向を見つめた。
「!!」
僕は言葉を失った。その先にあったのは青空に浮かんだ7色の虹だった。これはまさしく、豪雨にも負けずに祈りを捧げ、信じて待った僕に対しての神様からの贈り物だ。
「これは最高の画が撮れるぞ!もう一踏ん張りだな」
映はそうつぶやくと両掌でパンパンと頬を叩き、レンズを覗き込んだ。
大学のサークル室に着いたときにはすでに夕方6時を回っていた。後に予定のある美玲と拓巳を返した後、僕たちは今日の映像の取れ高を確認すべく、画面に向かう。
「本当に最高の映像が撮れたな」
「ああ、最高の映像だ。お前が合間に録音したセミの声や電車の走る音なんかも、効果的に使えそうだぞ」
映と響が今日のロケの健闘を互いに称え合う。
「2人とも本当にありがとう。あとは最高の編集をするだけだな」
「頑張れよ」
僕がそう礼を述べると映がそう言って親指を立てた。そして
「期待してるぜ」
響もそう言って僕の肩を叩いてくる。
画面には最後に撮影した大ロングの映像が映っている。そこにくっきりと浮かんだ虹はまるで日向と葵が向かっていく新たなステージへの架け橋となっているようだった。
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