最高の映画スタッフ

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最高の映画スタッフ

 心をゆさぶる最高の脚本に、観る者の目をあっという間に奪う映像技術。リアリティあふれる音響とスタイリッシュな編集技術、そしてプロ顔負けの演技力……それが成命館大学の映画制作サークル「インプレッション」の売りだ。僕・亀井戸孝明(たかあき)はこのサークルで脚本と演出、そして監督を兼務している。現在は10月の末にある成命祭に出品する長編映画を鋭意制作中だ。  いくらサークル活動とはいえ侮ることなかれ。僕達は映画を「ガチ」で制作している。その証拠に、他のメンバーも豪華だ。カメラマンの竹中(はえる)は映像の魔術師とも影で呼ばれている実力派だし、音響担当の佐藤(ひびき)は音についての研究を専攻している理工学部のエース。編集担当は梅原(つなぐ)。彼の卓越した編集技術はプロからも注目されており、軒並み100万回以上の再生数を誇っている動画投稿者からもたまに編集の依頼が来るとか来ないとか。そして僕は去年三国志をモチーフにした『鳳凰の雛』を大ヒットさせた立役者。『孝明』という名前の『こうめい』という音読みから『成命大の諸葛孔明』と呼ばれているほどの大監督だ。僕も含めてそれだけの錚々たるメンバーが揃っていて、映画が面白くないわけがないのだ。  そこに今年はミスコン準優勝の桜田美玲(みれい)と、Men's Beautyの表紙を飾ったこともある学生モデル・木村拓巳(たくみ)が加わった。今回の映画は長崎(あおい)を主人公とするラブロマンスで、この役を美玲が演じる。そして葵と結ばれることになる準主役の中村日向(ひゅうが)役には拓巳を迎えている。まさしく鬼に金棒だ。僕はすでに成命祭のシアターにいる満員の観客からスタンディングオベーションを受けている様子を頭の中に思い浮かべていた。
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