XⅢ セルシア、誕生

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XⅢ セルシア、誕生

「よっ。ずいぶん来なかったから、みんな心配していた」  医師のバトロネスが顔を上げ、咲羅に笑いかけた。 「すみません。ちょっといろいろあったので」 「団長から聞いた。体調崩してたんだってな? 最近冷え込むもんな。今日もあんまり無理するなよ」 「ありがとうございます」  宴の日から三日目。咲羅はようやく体調を取り戻して、救護舎にやって来た。今朝はずいぶんと寒く、雪でも降りそうな空気だ。いくら温めてあると言っても、床の上は冷たいだろうな、と講堂を開けると、転がされていた怪我人は、もう十人ほどになっていた。 「サクラがいなかった間に、みんな退舎してったんだ。お前に感謝してたぞ。よろしく言っといてくれってさ」 「そうですか。お役に立てたなら良かったです」  あれほどの怪我人がこうもいなくなるほど、自分は臥せっていたのかと自嘲する。どう考えても、休みすぎだ。  宴のあと、足を怪我したショックなのか、クロシェの発言による知恵熱なのか、咲羅は再び発熱し、ダウンした。サラシェリーアには「おみ足が痛いはずですのに頭を抱えておいでです」とサンドラに報告され、サンドラからいたく心配されたが、クロシェのことを相談するのもためらわれ、この二日間、一人悶々とした。  その間、見舞うクロシェにはなんの変化もなく、あれは自分の煩悩が作り出した幻覚だったのではと思ったくらいだ。  そして咲羅の出した結論は、「今は考えないことにしよう」だった。あの時の会話を反芻し、結論は今でなくてもいいことが大きい。つらいならという話をしていたが、咲羅は別に、現状はつらくない。身体的に痛い思いはしているが、心情的にはここの生活に感謝している。特に役に立てないなら養われるだけなのも心苦しいので、働き口を見つけたいとは思ったが、ここから逃げたかった訳ではない。誰かと結婚することなど、思いつきもしなかった。そしてまた、自分にそんな提案をする人が現れようなど。 (いちいち難易度が高いのよ)
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