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序 探索
気が付くと、そこは異世界だと認識出来た。
青い空を遮る木々の葉の形に、木肌の様子に、見覚えがない。そして見たこともない建築意匠の、小さな木造の建物が見える。自分が横たわっている場所は落ち葉が堆積して、やわらかく湿っていた。
(それで)
(どこに)
人の気配はしない。
緩やかに吹き抜けていく風は爽やかだが、クレイセスはわずかな息苦しさを感じた。空気が少し、澱んでいる。
(ああ)
(やはり違う)
(ここは)
(レア・ミネルウァではない)
そろそろと立ち上がり、ぐるりと視線を巡らす。
ここは今新緑の季節なのか、まだ若々しい葉の香りがした。
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