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改めてよく見ると、無造作に一つに括られているが、見たことのない黒髪だった。自分の髪も黒いが、それとは明らかに質を異にする黒。肌の色も白くはあるが、自世界では見たことのない不思議な色合いをしている。
初対面の男に対する警戒心なのか、心なしか、彼女の顔色は悪い。怯えているようにも見えないが、なんと言うべきか、覇気が、なかった。
(違う)
(の、か……?)
自分が知る「セルシア」は二人だけだが、どちらも他を圧するほどの雰囲気でもって存在していた。彼女に、その片鱗はない。
しかし、自分をここへ送り出した界王妃・ユリゼラは、必ず会える場所に着くようにすると言ったのだ。そして、会えばわかる、とも。
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