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「はい、これ。調べたから。それらしく弾いてね」と女に行きのコンビニでプリントアウトしてきた用紙を差し出す。その紙を広げて女がまた目をまばたいた。
「アンドレア・アマティ?(※広く知られているのはストラディヴァリですが、ストラディに並ぶ有名なオールド・ヴァイオリンです)」
アマティの楽器は独特の天使のスクロールが有名だ。ヴァイオリンが写った用紙は都内にあるアンティークショップのHPから拾ってきたものだった。慌てていたので“知人”が働いていることを後から気付いたが、今は時間との勝負だ。それに“知人”もそう気にしないだろう。しかし値段にして200万、と言う数字は破格な気がする。
「ホンモノかどうかは分からないけどね。それにアマティじゃなく、もしくはガスパロ・ダ・サロかもね?」彼女が意味深に笑うと女がはっとなったように口に手をやった。
「呪いのヴァイオリンの話は有名よ?それらしく弾いて、悪魔がこの男の魂をさらっていったって言えば、そんな迷信染みた話をこの一家のことだから信じるんじゃない?いい?部屋の扉はそのまま、ちょっとだけ開けてなるべく大きな音で弾いて。スピーカーを使うのもいいかも」
「でも…そんな簡単にいくかしら…」
「信じる信じないは個人の自由だよ。ただちょっと利用できればいい。とにかく私とあんたがこの男の死に関わっていない、そう思ってくれれば。この極悪非道な男は呪い殺されても当然なの」
「だけど…」
彼女は尚も何か言いたそうにしていた女をバルコニーの向こう側へ押しやると、内側から鍵を掛けた。これで女が入ってこれないだろうことを証明するのだ。
第二段階、密室が出来た。
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