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悪役令嬢に生まれ変わってる!?(2)
お婆さんが部屋から出て行き、ソファーに座り一人待っていると...。
部屋の外が騒がしくなり、部屋の扉が大きな音をたてて開いた。いや....砕けた...?
そして身なりが良く、高級な衣服を身に纏った、私と同じ髪色のモノクルをかけたイケメンなおじ様と、女神様のように神々しい...プラチナブロンドの美女が部屋に入ってきた。
たぶんこの二人がご両親かな?
でも見逃さなかった。
この美女...。
さっき扉ぶっ飛ばしたよね!?
しかも粉砕してるんだけど...ツッコミ入れるべき?
いや...無理怖い..。
とても私にはツッコミ入れるなんて無理。
優しそうで神々しい美人だけど怖い。
お家帰りたい....。
などと私が思っていると、目の前の銀髪イケメンおじ様が、私の肩を掴み...目線を私に合わせるようにしゃがんで私に話かけてきた。
「マーガレット...目が覚めたのか??
私が誰かわかるかい?パパだよ?お前のお父さんだよ...?
お前は二週間前に頭を強く打ち、その日に高熱を出して、二週間も目をさまさなかったんだよ。
体は何処か痛むかい?具合いは悪くないかい?
先ほどマーサから、お前が記憶を失くしていると聞いて慌てて駆けつけたんだ。
何か覚えているかい?パパのことは忘れてしまったかな?」
目の前のイケメンおじ様が、切なそうな表情を浮かべて私を気遣うように優しく話かけてきた。
マーサってさっきのお婆さんかな?
この人がやっぱり父親か....。
パパめちゃくちゃイケメンじゃない?
知的なインテリイケメン。
おじ様めちゃくちゃ大好物なんだが...。
こんなイケメンがパパとかマジか...。
毎日こんなイケオジ眺めていられるとか、ここはボーナスステージ??
あっ!ということは隣の怪力美女が私の母親ってことだね?
イケオジめちゃくちゃドストライクだけどこんな怖い奥さんの旦那さんとか本当無理です。
まあどっちみち自分のパパなんだけどね。
そんな不謹慎なことを考えていると、パパから私を奪うように怪力女神...ママが抱きしめてきた。
ママ待って。首しまってるから..気付いて。
パパに首しまってる。と突っ込まれママは私を優しく抱き直した...死ぬかと思った...。
今三途の川見えたぞ...。殺す気か!
「力加減間違えてごめんなさい..。
貴女が記憶を失くしたと聞いて動揺していたの。
貴女が目を覚まさなくてすごく心配したわ。
記憶喪失って本当なの?
ママのこと何も覚えていないの...?」
怪力ママが涙を流しながら優しく私の頬に触れる。怪力怖いけど優しいママみたい...。
悲しい顔させちゃってごめんなさい。
それに覚えていないどころか、全くの別人なんです。なんて言えるわけない...。
下手なことは言えないから記憶喪失のフリをするのが私には都合が良さそう。
私はこのまま記憶喪失のフリをすることにした。
優しいパパ、ママに嘘をつくのはつらいけど..
何も覚えていないと伝えた。
あなた達の大事な娘さんの体を奪っちゃってごめんなさい。
絶対に両親と弟を大事にするから。
生きる為に家族を利用すること...許してください。
まず自分が誰なのか、どうしてこうなったのか両親に聞くことにした。
まずは冷静な状況判断!
この国の名前はライエル魔法王国。
魔法が存在し、魔力を持つ者は16歳になると共に、国立ライエル魔術学園へ入学する義務がある。
そして魔法以外にも精霊、妖精、聖獣、ドラゴンなど多数の生き物が生息しており。
人種も、人間だけでなく、エルフや獣人、魔族などもいる。
昔は色々偏見もあったが、
現在は他種族間で和平協定を結んでいる為治安もいい。
そして私は、この国の公爵令嬢マーガレット・ジュエル・クラレンスに転生した。
お父様の名前はアレクシス・クラレンス
お母様の名前はフランソワ・クラレンス。
そしてジオルドという名前の弟がいるらしい。
美形一家の弟....イケメンかな?
会うのが楽しみ!
名前に「ジュエル」ってミドルネームがあるのにお気付きだろうか?
この名前は、私のような宝石を散りばめたみたいな、不思議な目を持った人しか名乗ることを許されない特別な名前らしい。
ジュエルの目は、この国を守護する女神様の祝福を受けた者だけが持つ特別な目。
何故か、クラレンス公爵家の女性にしか生まれないかなり希少な目なのだ。
今は私と祖母のマリー・ジュエル・クラレンスしかジュエルの目を持った人はいないみたい。
なんだか中二病っぽくて恥ずかしい。
魔法王国ってことは、魔法が使えるのかな?
某有名映画の、魔法使いの男の子が魔法学園に通うシリーズ大好きで原作小説も全巻揃えるくらい好きだったんだよね!
魔法を使えるようになりたいと思っていたから魔法王国と聞いてワクワクしてる自分がいる。
さて話は反れたけど..。
私が頭を強く打ってしまったのは、ちょうど二週間前。
私はお母様と共に、お城へ皇后様が主催するお茶会に参加していた。
うちの一族は、過去何回も王室のお姫様と婚姻を結ぶくらい由緒正しき歴史ある一族らしい。母と皇后様は幼い頃から仲が良く、お父様と王様も学生時代からとても仲が良い。
その日は、偶然皇后様のご子息第一王子殿下が、王城の騎士団の訓練場で鍛練する予定があり、母と皇后様と一緒に見学に行ったらしい。
初めて見る、迫力ある鍛練に私は興奮しすぎるあまり...近付きすぎてしまった。
第一王子殿下の弾かれた木刀が、運悪く私の頭頂部に激突してしまい、そこから二週間意識不明になってしまったようである。
当の木刀を弾き飛ばされてしまった第一王子殿下は、それはそれは焦ってしまったらしい...。たぶん手離した木刀が、女の子に直撃してしまうなんて思わなかったから、きっと責任を感じてしまっていることだろう。
私が興奮して近付きすぎてしまったせいで...。
多大なる心配と、ご迷惑をおかけしてしまった。
それに...第一王子は、皇后様にそれはそれは怒られてしまったと聞いたし、次に顔を合わせる機会があったら誠心誠意謝罪しよう。
まだ面識がない私では第一王子殿下宛に直接お詫びのお手紙は出せないので、母に頼み皇后様と、第一王子殿下にお詫びの手紙を出してもらった。
あれ??
マーガレットになって、まだ第一王子にお会いしたことないけど顔わかる...。
一回も、顔を合わせたことがないのに何故?
それに....マーガレット・クラレンスって名前もなんか聞いたことがある。
しかもライエル魔法王国も....?
その時私の背中に嫌な汗が流れる....。
いや...そんな訳ない....そんな....。
絶対そんな事あっちゃいけない....。
だってそれは....。
まさかこの世界は...?
私が前にハマっていた、乙女ゲーの
「我が人生を君に捧ぐ」の世界じゃないか...。
私は「我が君」の世界に転生してしまったの?
そんな、転生だなんて...。物語の世界の中の話だと思っていたのに現実になるなんて。
それに「我が君」は、私の大好きな絵師さんが作画担当してたから始めたけど...。
めちゃくちゃストーリーがヘビーで、悪役令嬢がどのルートでも必ず死ぬか、良くて国外追放になってたよね...?
まさか..嘘でしょう...?
「悪役令嬢マーガレット・クラレンス」って私じゃねぇか....。詰んだ。
私前世だって21歳で亡くなったのに...マーガレット確か18歳で処刑されてなかったか?
私は今年15歳になる...。
学園入学が16歳からだから、あとちょうど1年。入学するまでの1年でなんとか対策をしないと。
私は、処刑されてしまうか、国外追放だ...。
良くて国外追放って、子供が身一つで追放されるって、何の力もないのに実質処刑と変わらないじゃん...。
でもまだ処刑されるよりよっぽどいい。
それまでに、自分の力だけでなんとか生きていけるように力を付けなきゃだし。
それに生活するには資金がいる。
幸い私は、公爵家の娘だ。どうにか努力すれば資金はなんとかなる。
しかし追放ってなったら、間違いなく公爵家から追い出される。実家は頼れなくなるし、優しいパパ、ママ、可愛い弟には迷惑をかけるなんてできない。
国外追放や、公爵家を追い出される前になんとか自分の力でこの家を自分から出ていこう。
国内は、攻略対象がいるから危ないし、早いこと隣国へでも逃亡しよう!!
そうと決まればまずは、資金を作ることを考えなくては。力を付けるのは魔法学園通う頃には勝手に身に付くからね。それでも護身術くらいは身に付けないと。
私は早速、何か方法がないか調べる為、たくさんの蔵書が保管してある、お父様の執務室へ向かった。
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