夜の公園

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 呻き声か聞こえる。  山井(ヤマノイ)は公園の中ほどまで来てはじめて、そこが自分が立ち入るべきではない場所だったと気付いた。  二つある最寄り駅のうち、この公園を抜けるルートはいつも使っている駅より5分ほどアパートから近いのだが、各停しか止まらない駅ゆえ、所要時間や本数を考えると利用メリットが低い。  公園を迂回した場合でも、準急の停まる向こうの駅までと歩く距離はほぼ同じ。信号がない分だけ駅までの到着時間は早くなるのだが、その短縮は快速や準急を利用のそれに負ける。  会社も向こうの駅までの定期代で通勤手当を出してくれているから尚更だ。  今日は残業がために快速の運行時間が終わってしまった。  定期なのだから一駅手前で降りても運賃はお得にならない。  それなのに、たった一駅、1分。道のり5分の短縮のために、手前の駅で降りた。  少しでも早く帰りたいほどに疲れていた。それに、寒かった。  GW明け、クールビズ解禁と言われ、朝方は快適だったし、昼には暑くなりそうだったせいもあって、半袖シャツで、ジャケットも持たずに出勤してしまった。  夕方まではそれで正解だったが、今は失敗だった。  色々後悔していた。  しかし今更引き返すのも違うと思った。    悲鳴が聞こえてビクリとする。  その絶叫に善がりの言葉があって、身体が熱くなる。ジャケットがなくてももう寒くはない。  恥ずかしい。  他人の情事の真っただ中を歩いているのだ。恥ずかしさに顔が熱くなっていた。  何組いるのだろうか。ベンチというベンチに、茂みという茂みに気配がある。  周囲を見ないように意識すればするほど耳が冴えて、言葉を聞き分けてしまう。  足早に通り過ぎようとしていた並木道。  山井の右側は等間隔にベンチが据えられて、その一つ一つにカップルがいるみたいだった。彼らの睦言が全て自分に向けられているような気がした。
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