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並んで座った二人は、唇を重ね、胸やら股間やらお互いの柔らかくて大事なところを触れ合っている。
見ないようにしながら通り過ぎようとしているのにそれが分かってしまう。
相手の上に座って、明らかに結合している気配と嬌声。
それを見まいと反対側に意識を向ければ、木に背を預けて抱き合う影、木に手をつかせて後ろから攻めているらしき影。姿は見えないが、植え込みがその向こうから聞こえる興奮の息遣いに合わせて揺れている。
ぴちゃぴちゃくちゅくちゅと湿った音。囁き声。
林の方が激しいようで顔を逸らす。
「や、見られてる」
「好きだろ、そういうの。ほら、蔑む目、してる」
「いやぁ」
ちょうどさしかかったベンチからそんな会話が聞こえた気がした。
また慌てて林をみる。
白い臀部が思いの外近くにあるのが見えて、また顔を背ける。
そんな繰り返しだった。
向こうのベンチの男が山井を見た。
目が合った気がしてうつむいた。
「おい、こいつのケツをみろって、すげえぞ」
みないみないみない。みえないみえない。きこえないきこえない。
山井に声をかけてきた男の足の間に、顔をうずめて、自慰に夢中な相手のこちら側に突き出したお尻の割れ目から何かが突き出ているのが視界の端に入っていたが、それが何かを確かめたくはなかった。
いくつかのベンチを通り過ぎたところで、足がすくんだ。
「ぎゃあ~~~、い゛~~い゛~あ゛~イ゛グ、イ゛グ~~~、じんじゃう~、あ゛~」
ベンチの狭い板の上で器用に折り重なっていて、覆いかぶさった男が激しく身体を前後させていた。
下になっている方の顔は本人が抱える膝の向こうになっていてわからなかったが、上の男は足を止めた山井を振り向いて恍惚の目つきでニヤリと笑った。
山井はAVで見るような目つきを初めて目の当たりにした驚きと、意外さとで息を飲んだ。
普通の人だと思った。
興奮しているけど、街中で行き会うその他の見知らぬ人々とかわらない。
よろよろと歩き出して、何かにぶつかった。
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