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何が起こったのか理解することが出来ないでいると、
「え? 何、これ?」
俺の意思に反して勝手に発せられる声。体も勝手に動かされる。
いったいどうなってやがる。なんで俺の体が突然動かせなくなった?
体が自由に動かせない理由が気になっていると、再び声が勝手に発せられる。
「あ、ごめんね。もしかしたら僕、兄ちゃんに乗り移っちゃったみたい」
“は!? 何を言ってんだ!? 乗り移る!?”
「僕の名前は八神 誠也。幽霊なんだ。幽霊って言っても普通の幽霊とはちょっと違ってて……」
“幽霊!? ま、マジかよ!”
俺は幽霊の存在をまあまあ信じてはいたが、ニ十八年間生きてきて一度も会ったことがなかったため、まあまあ疑う時もあった。
そもそも俺を操っているこいつは幽霊なのかすら怪しいがな。もしかしたら俺にはもう一つの人格があって、それが今になって目覚めた可能性だってあるのかもしれない。
「うん。幽霊だよ。ちょっと特別な幽霊だけどね。死んじゃった十五歳以下の子供の中で、神様に特別に選ばれた子供だけが、一日の内の二時間だけ現世に戻って来ることを許されるんだ。幽霊としてだけど……」
うん。ちょっと何言ってんのかわかんねぇ。だが、とりあえず会話することは出来るみてぇだ。
俺が声を出そうとすると、俺の頭の中でボワンボワン声が響く感じになっている。それが幽霊らしき奴に届いてるみてぇだ。俺もちょっと何言ってんのかわかんねぇ。
“お前は誰なんだ? 俺の別の人格とかじゃねぇのか?”
「違うよ。幽霊だよ。僕はここの隣に住んでたんだ。だけど、十二歳で病気で死んじゃったんだよね。あれからもう一ヶ月が経ったのかな」
“何!? 隣に住んでただと!?”
……待てよ? 八神って苗字は聞いたことがあるな。確か、隣の住人の苗字もそうだったな。ってことは……はっ!
この時、俺はようやくこいつが幽霊なのだと確信するのだった。
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