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「僕はね、星を見るのが好きなんだ」
なんか語り始めたぞ。
「星を見ると心が癒されるんだ。嫌なことがあった時も、星を見ることで乗り越えることが出来たんだ。死への恐怖だって星を見たら和らいだんだ。だから、僕は星が大好きなんだ」
“そうか……”
確かこいつは十二歳とか言ってたな。そんなに早く死んじまったなんて可哀想としか言いようがないな。もっとやりたいことだっていっぱいあっただろうに……。両親もかなりショックを受けただろうな……。
俺も一年前に兄貴を病気で亡くしていた。ニ十九歳だった。まさか、そんなに早く死ぬなんて思わなかった。ヨボヨボの爺さんになるまで生きるって、理由もなく確信していたんだ。
だが、死んだ。
しばらく実感が湧かなかった。探せばどこかにまだ兄貴はいるんじゃねぇかって、そう思えて仕方がなかったんだ。
死を受け入れることがここまで辛いだなんて思わなかった。身近な存在を亡くすと、ここまで辛いだなんて……。
一年経ってもまだ死を受け入れることが出来ないでいる。兄貴と普通に会う夢とかよく見ていた。
『もう幽霊でもいいから俺に会いに来てくれ』と願ってしまう程、俺の心は傷んでいた。
「ねぇ、兄ちゃん。こんなことになっちゃって頼みづらいんだけどさ、僕のワガママを聞いてくれないかな?」
“なんだ?”
「オトンちゃんとオカンちゃんに会わせて欲しいんだ」
俺は幽霊のその頼みに、迷うことなく “わかった” と返事をした。
この幽霊の親も、俺と同じ傷を負っている。だから、その傷を癒すための手助けをしてあげたいと思ったんだ。
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