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まだ干してなかった洗濯物を幽霊に干してもらい、家を出て、隣の家に行ってもらった。
インターホンを鳴らすとドアが開く。現れたのは三十代くらいの女性だった。この幽霊の母親といったところか。
「池田さん? どのようなご用件で?」
「お、お、お、お」
その母親の姿を見た瞬間に、幽霊は変な声を出した。
「お?」
幽霊の変な様子に母親は首を傾げる。すると、
「オカンちゃーーん!!」
幽霊は跪いて母親の腕にしがみつき、泣きじゃくった。
“ちょっ、おまっ!”
「キャーーー!!」
突然のヤバイ行動に、母親は大きな悲鳴を上げるのだった。
“ば、バカ! 何やってんだよ! お前の母親には俺の姿で見えてんだからヤバイ奴だと勘違いされるだろうが!”
「ご、ごめん兄ちゃん! オカンちゃんもごめん!」
幽霊は慌てて母親から手を離した。
「どうした母さん!」
家の中から玄関の方へと駆け付けてくる三十代くらいの男性。おそらく幽霊の父親だろう。
まずいな……俺、ぶっ殺されるぞ。
「池田さんが突然私の腕にしがみついてきたの。しかも、なんだか様子がおかしくて……」
母親がそう状況を説明すると、父親はちょっと強めの口調で言ってくる。
「あの、池田さん? 僕の妻に変なことをしないでいただけますか?」
うお、恐ぇ……。
「お、オトンちゃん……」
「は? その呼び方……」
幽霊の言葉に、父親は目を見開いた。次に母親が口を開く。
「そう! おかしいの! さっきも私のことを『オカンちゃん』って呼んだの! 誠也みたいに!」
「どういうことだ? なんで池田さんが誠也のその呼び方を知ってるんだ?」
「オトンちゃん! 僕だよ! 誠也だよ! 兄ちゃんに乗り移って会いに来たんだよ! 乗り移ったのはわざとじゃないけど……」
「喋り方まで……本当に、本当に誠也なのか?」
「うん! そうだよ! 好きな物は星! 嫌いな物はゴキブリ!」
「あ、ああ。そうだな……」
「将来の夢は宇宙飛行士! あらゆる星を見まくってやるんだ!」
「ああ……そうだな! 間違いない! お前は誠也だ! マジかよ……信じらんねぇ! こんなことってあるのか! さぁ誠也! こっちに来い!」
父親の目には涙が浮かんでいた。きっと嬉しくて仕方がないんだろうな。もう二度と会えないと思っていた人と、もう一度会うことが出来たんだから。
姿は俺だがな。おっと、一言余計だったか。
いやあ、危うく俺の人生が終わるとこだったぜ……。
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