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幽霊から聞いた話だが、幽霊は夜七時から夜九時までしか現世にいられないらしい。
時間が来れば、天国へと戻されてしまうようだ。
俺ごと天国に戻されるのかと思ったが、どうやらそういうことはないとのこと。
人に乗り移ることはあまり良くないとされているが、悪いことを目的としないならば、『まあいっか』って感じらしい。
現世に戻れる時間は、神に『現世に戻っていい特別な幽霊』に選ばれた時に、幽霊が戻る時間を設定するようだ。その設定は一度決めると何故か変更は不可らしい。
この幽霊の場合、夜七時から夜九時に設定してあるから、それ以外の時間には現世には戻れないそうだ。
何故この時間を選んだのかと聞くと、『この時間はオトンちゃんとオカンちゃんが家にいるし、星が見える時があるから』と答えた。
因みに、次に現世に戻る時は前回いた場所にワープされるようになっているらしい。
つまり、夜七時になるとこの幽霊は俺にまた取り憑いてくるというわけだ!
「そろそろ九時だね」
壁に掛けてある時計を見て幽霊は言う。すると、淋しそうな表情をする両親。
「そうか……また明日も会えるよな?」
「それは兄ちゃん次第だけどね」
「あ、そっか……」
「池田さん、無理を承知でお願いするのですが、明日も誠也に会わせてくれませんか?」
母親は懇願の眼差しを俺に向けてくる。
うっ、これは断りづれぇ……。これから毎日二時間拘束されるのは正直言って辛ぇ。だが、ここは潔く決めるしかねぇな。
“誠也。了解ですって言ってくれ”
「了解です、だって」
その言葉で両親の顔がパーッと明るくなった。
その顔を見たら、『まぁ仕方ねぇ、頑張るか』と俺は思うのだった。
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