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…………の、はずだったのに。
驚愕する俺の目の前には、ピカピカと光る小さな石ころ。希少なはずの流れ星が、俺の目の前に降ってきたのだ。
偶然部活が長引いて、偶然近道をしようと普段通らない道を進んでいた。そしたらこれだ。なんだよ、今日は降らないはずだろ。
しばらくそれを眺めていたが、眺めていてもなにも変わらないので手を伸ばして拾い上げてみた。教科書やニュースで見た通りの流れ星だ。……めっちゃちっさいけど。
『流れ星を見つけた、拾った場合は、すぐに流星省に……』
朝のニュースが頭を過る。しかし、ふと魔が差した。俺はその流れ星をポケットにしまいこみ、何事もなかったかのようにその場を後にした。
家に帰ってポケットを探ると、流れ星はやはりそこに入っていた。
教科書を取り出して流れ星のページを開くと、どうやらこれがピカピカしている間だけ願いを叶える力があるらしい。叶う願いの規模は流れ星の大きさに比例するから、この小ささだとそんな大した願いは叶わないだろう。
ピカピカのそれを握ったまま、ベッドに倒れ込んで目を閉じる。……本当なら、政府に届けるべきだ。でも、こんなに小さな流れ星なら俺が持ってても良いんじゃないか?だってそんな大したこと叶わないんだから。
悶々と考えたあと、結局俺はそれをティッシュで包んで机の引き出しに入れた。まるで子供が大切なものをおもちゃ箱の奥に隠すように。思わず笑いがこぼれる。ああ、なんだかとっても楽しいぞ。
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